白石忠志    SHIRAISHI Tadashi 

平成21年改正前の独禁法典

平成21年改正のうち、平成21年改正法附則第1条ただし書により公布の日から起算して1月を経過した日から施行された部分は、下記に既に溶け込んでいる。例えば、実際には平成21年改正前には、第8条に第2項以下があったし、第70条の15には第1項後段と第2項はなかった。このあたりは、平成21年株券電子化前の独禁法典のほうが「平成21年改正前」に近い。

(独禁法典には見出しがないので白石が独自に作成)

 

◎昭和二十二年法律第五十四号
(件名:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)

 第一章 総則(第一条・第二条)
 第二章 私的独占及び不当な取引制限(第三条―第七条の二)
 第三章 事業者団体(第八条―第八条の三)
 第三章の二 独占的状態(第八条の四)
 第四章 株式の保有、役員の兼任、合併、分割及び事業の譲受け(第九条―第十八条)
 第五章 不公正な取引方法(第十九条・第二十条)
 第六章 適用除外(第二十一条―第二十三条)
 第七章 差止請求及び損害賠償(第二十四条―第二十六条)
 第八章 公正取引委員会
  第一節 設置、任務及び所掌事務並びに組織等(第二十七条―第四十四条)
  第二節 手続(第四十五条―第七十条の二十二)
  第三節 雑則(第七十一条―第七十六条)
 第九章 訴訟(第七十七条―第八十八条)
 第十章 雑則(第八十八条の二)
 第十一章 罰則(第八十九条―第百条)
 第十二章 犯則事件の調査等(第百一条―第百十八条)
 附則

   第一章 総則

第一条 この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。

第二条 この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。
○2 この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。
一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団
二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団
三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体
○3 この法律において「役員」とは、理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の事業の主任者をいう。
○4 この法律において「競争」とは、二以上の事業者がその通常の事業活動の範囲内において、かつ、当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく次に掲げる行為をし、又はすることができる状態をいう。
一 同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること
二 同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること
○5 この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
○6 この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
○7 この法律において「独占的状態」とは、同種の商品(当該同種の商品に係る通常の事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく供給することができる商品を含む。)(以下この項において「一定の商品」という。)並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)の価額(当該商品に直接課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)又は国内において供給された同種の役務の価額(当該役務の提供を受ける者に当該役務に関して課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)の政令で定める最近の一年間における合計額が千億円を超える場合における当該一定の商品又は役務に係る一定の事業分野において、次に掲げる市場構造及び市場における弊害があることをいう。
一 当該一年間において、一の事業者の事業分野占拠率(当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)又は国内において供給された当該役務の数量(数量によることが適当でない場合にあつては、これらの価額とする。以下この号において同じ。)のうち当該事業者が供給した当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品又は役務の数量の占める割合をいう。以下この号において同じ。)が二分の一を超え、又は二の事業者のそれぞれの事業分野占拠率の合計が四分の三を超えていること。
二 他の事業者が当該事業分野に属する事業を新たに営むことを著しく困難にする事情があること。
三 当該事業者の供給する当該一定の商品又は役務につき、相当の期間、需給の変動及びその供給に要する費用の変動に照らして、価格の上昇が著しく、又はその低下がきん少であり、かつ、当該事業者がその期間次のいずれかに該当していること。
イ 当該事業者の属する政令で定める業種における標準的な政令で定める種類の利益率を著しく超える率の利益を得ていること。
ロ 当該事業者の属する事業分野における事業者の標準的な販売費及び一般管理費に比し著しく過大と認められる販売費及び一般管理費を支出していること。
○8 経済事情が変化して国内における生産業者の出荷の状況及び卸売物価に著しい変動が生じたときは、これらの事情を考慮して、前項の金額につき政令で別段の定めをするものとする。
○9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいう。
一 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
二 不当な対価をもつて取引すること。
三 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。
四 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
五 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
六 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、若しくは強制すること。
○10 この法律において「子会社」とは、会社がその総株主(総社員を含む。以下同じ。)の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。第四章において同じ。)の過半数を有する他の国内の会社をいう。この場合において、会社が有する議決権には、社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第百四十七条第一項又は第百四十八条第一項の規定により発行者に対抗することができない株式に係る議決権を含むものとする。

   第二章 私的独占及び不当な取引制限

第三条 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

第四条 削除

第五条 削除

第六条 事業者は、不当な取引制限又は不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的協定又は国際的契約をしてはならない。

第七条 第三条又は前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止め、事業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
○2 公正取引委員会は、第三条又は前条の規定に違反する行為が既になくなつている場合においても、特に必要があると認めるときは、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為が既になくなつている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる。ただし、当該行為がなくなつた日から三年を経過したときは、この限りでない。

第七条の二 事業者が、不当な取引制限又は不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定若しくは国際的契約で次の各号のいずれかに該当するものをしたときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」という。)における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額(当該行為が商品又は役務の供給を受けることに係るものである場合は、当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した購入額)に百分の十(小売業については百分の三、卸売業については百分の二とする。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、その額が百万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
一 商品又は役務の対価に係るもの
二 商品又は役務について次のいずれかを実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの
イ 供給量又は購入量
ロ 市場占有率
ハ 取引の相手方
○2 前項の規定は、事業者が、私的独占(他の事業者の事業活動を支配することによるものに限る。)で、当該他の事業者(以下この項において「被支配事業者」という。)が供給する商品又は役務について、次の各号のいずれかに該当するものをした場合に準用する。この場合において、前項中「当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額(当該行為が商品又は役務の供給を受けることに係るものである場合は、当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した購入額)」とあるのは「当該事業者が被支配事業者に供給した当該商品又は役務(当該被支配事業者が当該行為に係る一定の取引分野において当該商品又は役務を供給するために必要な商品又は役務を含む。)及び当該一定の取引分野において当該事業者が供給した当該商品又は役務(当該被支配事業者に供給したものを除く。)の政令で定める方法により算定した売上額」と、「(小売業については百分の三、卸売業については百分の二とする。)」とあるのは「(当該事業者が小売業を営む場合は百分の三、卸売業を営む場合は百分の二とする。)」と読み替えるものとする。
一 その対価に係るもの
二 次のいずれかを実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの
イ 供給量
ロ 市場占有率
ハ 取引の相手方
○3 前二項に規定する「市場占有率」とは、一定の取引分野において一定の期間内に供給される商品若しくは役務の数量のうち一若しくは二以上の事業者が供給し、若しくは供給を受ける当該商品若しくは役務の数量の占める割合又は一定の取引分野において一定の期間内に供給される商品若しくは役務の価額のうち一若しくは二以上の事業者が供給し、若しくは供給を受ける当該商品若しくは役務の価額の占める割合をいう。
○4 第一項の場合において、当該事業者が次のいずれかに該当する者であるときは、同項中「百分の十」とあるのは「百分の四」と、「百分の三」とあるのは「百分の一・二」と、「百分の二」とあるのは「百分の一」とする。
一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種及び第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本金の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、卸売業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、サービス業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
四 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であつて、小売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
五 資本金の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であつて、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの
六 協業組合その他の特別の法律により協同して事業を行うことを主たる目的として設立された組合(組合の連合会を含む。)のうち、政令で定めるところにより、前各号に定める業種ごとに当該各号に定める規模に相当する規模のもの
○5 第一項の規定により課徴金の納付を命ずる場合において、当該事業者が、当該違反行為に係る事件について第四十七条第一項第四号に掲げる処分又は第百二条第一項に規定する処分が最初に行われた日(以下この条において「調査開始日」という。)の一月前の日(当該処分が行われなかつたときは、当該事業者が当該違反行為について第五十条第六項において読み替えて準用する第四十九条第五項の規定による通知(次項及び第七項において「事前通知」という。)を受けた日の一月前の日)までに当該違反行為をやめた者(次項に該当する場合を除き、当該違反行為に係る実行期間が二年未満である場合に限る。)であるときは、第一項中「百分の十」とあるのは「百分の八」と、「百分の三」とあるのは「百分の二・四」と、「百分の二」とあるのは「百分の一・六」と、前項中「百分の四」とあるのは「百分の三・二」と、「百分の一・二」とあるのは「百分の一」と、「百分の一」とあるのは「百分の〇・八」とする。
○6 第一項(第二項において読み替えて準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により課徴金の納付を命ずる場合において、当該事業者が次の各号のいずれかに該当する者であるときは、第一項中「百分の十」とあるのは「百分の十五」と、「百分の三」とあるのは「百分の四・五」と、「百分の二」とあるのは「百分の三」と、第四項中「百分の四」とあるのは「百分の六」と、「百分の一・二」とあるのは「百分の一・八」と、「百分の一」とあるのは「百分の一・五」とする。
一 調査開始日からさかのぼり十年以内に、第一項の規定による命令を受けたことがある者(当該命令が確定している場合に限る。次号において同じ。)又は第十三項若しくは第十六項の規定による通知若しくは第五十一条第二項の規定による審決を受けたことがある者
二 第四十七条第一項第四号に掲げる処分又は第百二条第一項に規定する処分が行われなかつた場合において、当該事業者が当該違反行為について事前通知を受けた日からさかのぼり十年以内に、第一項の規定による命令を受けたことがある者又は第十三項若しくは第十六項の規定による通知若しくは第五十一条第二項の規定による審決を受けたことがある者
○7 公正取引委員会は、第一項の規定により課徴金を納付すべき事業者が次の各号のいずれにも該当する場合には、同項の規定にかかわらず、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じないものとする。
一 公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち最初に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者(当該報告及び資料の提出が当該違反行為に係る事件についての調査開始日(第四十七条第一項第四号に掲げる処分又は第百二条第一項に規定する処分が行われなかつたときは、当該事業者が当該違反行為について事前通知を受けた日。次号及び次項において同じ。)以後に行われた場合を除く。)であること。
二 当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後において、当該違反行為をしていた者でないこと。
○8 第一項の場合において、公正取引委員会は、当該事業者が第一号及び第三号に該当するときは同項又は第四項から第六項までの規定により計算した課徴金の額に百分の五十を乗じて得た額を、第二号及び第三号に該当するときは第一項又は第四項から第六項までの規定により計算した課徴金の額に百分の三十を乗じて得た額を、それぞれ当該課徴金の額から減額するものとする。
一 公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち二番目に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者(当該報告及び資料の提出が当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後に行われた場合を除く。)であること。
二 公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち三番目に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者(当該報告及び資料の提出が当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後に行われた場合を除く。)であること。
三 当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後において、当該違反行為をしていた者でないこと。
○9 第一項の場合において、公正取引委員会は、当該違反行為について第七項第一号又は前項第一号若しくは第二号の規定による報告及び資料の提出を行つた者の数が三に満たないときは、当該違反行為をした事業者のうち次の各号のいずれにも該当する者(第七項第一号又は前項第一号若しくは第二号の規定による報告及び資料の提出を行つた者の数と第一号の規定による報告及び資料の提出を行つた者の数を合計した数が三以下である場合に限る。)については、第一項又は第四項から第六項までの規定により計算した課徴金の額に百分の三十を乗じて得た額を、当該課徴金の額から減額するものとする。
一 当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後公正取引委員会規則で定める期日までに、公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出(第四十七条第一項各号に掲げる処分又は第百二条第一項に規定する処分その他により既に公正取引委員会によつて把握されている事実に係るものを除く。)を行つた者
二 前号の報告及び資料の提出を行つた日以後において当該違反行為をしていた者以外の者
○10 公正取引委員会は、第七項第一号、第八項第一号若しくは第二号又は前項第一号の規定による報告及び資料の提出を受けたときは、当該報告及び資料の提出を行つた事業者に対し、速やかに文書をもつてその旨を通知しなければならない。
○11 公正取引委員会は、第七項から第九項までの規定のいずれかに該当する事業者に対し第一項の規定による命令又は第十三項の規定による通知をするまでの間、当該事業者に対し、当該違反行為に係る事実の報告又は資料の提出を追加して求めることができる。
○12 公正取引委員会が、第七項第一号、第八項第一号若しくは第二号又は第九項第一号の規定による報告及び資料の提出を行つた事業者に対して第一項の規定による命令又は次項の規定による通知をするまでの間に、次の各号のいずれかに該当する事実があると認めるときは、第七項から第九項までの規定にかかわらず、これらの規定は適用しない。
一 当該事業者が行つた当該報告又は提出した当該資料に虚偽の内容が含まれていたこと。
二 前項の場合において、当該事業者が求められた報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をしたこと。
三 当該事業者がした当該違反行為に係る事件において、当該事業者が他の事業者に対し第一項に規定する違反行為をすることを強要し、又は他の事業者が当該違反行為をやめることを妨害していたこと。
○13 公正取引委員会は、第七項の規定により課徴金の納付を命じないこととしたときは、同項の規定に該当する事業者がした違反行為に係る事件について当該事業者以外の事業者に対し第一項の規定による命令をする際に(同項の規定による命令をしない場合にあつては、公正取引委員会規則で定めるときまでに。第十六項において同じ。)、これと併せて当該事業者に対し、文書をもつてその旨を通知するものとする。
○14 公正取引委員会は、第一項(第二項において読み替えて準用する場合を含む。以下この項、第十七項及び第十八項において同じ。)の場合において、同一事件について、当該事業者に対し、罰金の刑に処する確定裁判があるときは、第一項、第四項から第六項まで、第八項又は第九項の規定により計算した額に代えて、その額から当該罰金額の二分の一に相当する金額を控除した額を課徴金の額とするものとする。ただし、第一項、第四項から第六項まで、第八項若しくは第九項の規定により計算した額が当該罰金額の二分の一に相当する金額を超えないとき、又は当該控除後の額が百万円未満であるときは、この限りでない。
○15 前項ただし書の場合においては、公正取引委員会は、課徴金の納付を命ずることができない。
○16 公正取引委員会は、前項の規定により課徴金の納付を命じない場合には、罰金の刑に処せられた事業者に対し、当該事業者がした第一項又は第二項に規定する違反行為に係る事件について当該事業者以外の事業者に対し第一項(第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による命令をする際に、これと併せて文書をもつてその旨を通知するものとする。
○17 第一項の規定による命令を受けた者は、同項、第四項から第六項まで、第八項、第九項又は第十四項の規定により計算した課徴金を納付しなければならない。
○18 第一項、第四項から第六項まで、第八項、第九項又は第十四項の規定により計算した課徴金の額に一万円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
○19 第一項又は第二項に規定する違反行為をした事業者が会社である場合において、当該会社が合併により消滅したときは、当該会社がした違反行為並びに当該会社が受けた第一項(第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による命令、第十三項及び第十六項の規定による通知並びに第五十一条第二項の規定による審決(以下この項において「命令等」という。)は、合併後存続し、又は合併により設立された会社がした違反行為及び当該合併後存続し、又は合併により設立された会社が受けた命令等とみなして、前各項の規定を適用する。
○20 前項の場合において、第七項から第九項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
○21 実行期間の終了した日から三年を経過したときは、公正取引委員会は、当該違反行為に係る課徴金の納付を命ずることができない。

   第三章 事業者団体

第八条 事業者団体は、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
一 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。
二 第六条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること。
三 一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。
四 構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)の機能又は活動を不当に制限すること。
五 事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。

第八条の二 前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者団体に対し、当該行為の差止め、当該団体の解散その他当該行為の排除に必要な措置を命ずることができる。
○2 第七条第二項の規定は、前条の規定に違反する行為に準用する。
○3 公正取引委員会は、事業者団体に対し、第一項又は前項において準用する第七条第二項に規定する措置を命ずる場合において、特に必要があると認めるときは、第八章第二節に規定する手続に従い、当該団体の役員若しくは管理人又はその構成事業者(事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者が構成事業者である場合には、当該事業者を含む。第二十六条第一項及び第五十九条第二項において同じ。)に対しても、第一項又は前項において準用する第七条第二項に規定する措置を確保するために必要な措置を命ずることができる。

第八条の三 第七条の二第一項、第三項から第五項まで、第七項から第十三項まで、第十七項、第十八項及び第二十一項の規定は、第八条第一号(不当な取引制限に相当する行為をする場合に限る。)又は第二号(不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定又は国際的契約をする場合に限る。)の規定に違反する行為が行われた場合に準用する。この場合において、第七条の二第一項中「事業者が」とあるのは「事業者団体が」と、「当該事業者に対し」とあるのは「当該事業者団体の構成事業者(事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者が構成事業者である場合には、当該事業者を含む。以下この条において「特定事業者」という。)に対し」と、同条第四項中「当該事業者」とあるのは「当該特定事業者」と、同条第五項中「当該事業者」とあるのは「当該特定事業者」と、「をやめた者(次項に該当する場合を除き、当該違反行為」とあるのは「の実行としての事業活動をやめた者(当該違反行為の実行としての事業活動」と、同条第七項中「納付すべき事業者」とあるのは「納付すべき特定事業者」と、「当該事業者」とあるのは「当該特定事業者」と、「当該違反行為をした事業者」とあるのは「当該違反行為をした事業者団体の特定事業者」と、「をしていた」とあるのは「の実行としての事業活動をしていた」と、同条第八項中「当該事業者」とあるのは「当該特定事業者」と、「又は第四項から第六項まで」とあるのは「、第四項又は第五項」と、「当該違反行為をした事業者」とあるのは「当該違反行為をした事業者団体の特定事業者」と、「をしていた」とあるのは「の実行としての事業活動をしていた」と、同条第九項中「当該違反行為をした事業者」とあるのは「当該違反行為をした事業者団体の特定事業者」と、「又は第四項から第六項まで」とあるのは「、第四項又は第五項」と、「をしていた」とあるのは「の実行としての事業活動をしていた」と、同条第十項及び第十一項中「事業者」とあるのは「特定事業者」と、同条第十二項中「行つた事業者」とあるのは「行つた特定事業者」と、「当該事業者が行つた」とあるのは「当該特定事業者が行つた」と、「、当該事業者」とあるのは「、当該特定事業者」と、「当該事業者がした」とあるのは「当該事業者団体がした」と、「他の事業者」とあるのは「他の特定事業者」と、「第一項に規定する違反行為をする」とあるのは「当該違反行為の実行としての事業活動を行う」と、「をやめる」とあるのは「の実行としての事業活動をやめる」と、同条第十三項中「事業者」とあるのは「特定事業者」と、「した違反行為」とあるのは「行つた同項第一号の規定による報告」と、同条第十七項及び第十八項中「第四項から第六項まで、第八項、第九項又は第十四項」とあるのは「第四項、第五項、第八項又は第九項」と読み替えるものとする。

   第三章の二 独占的状態

第八条の四 独占的状態があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、事業の一部の譲渡その他当該商品又は役務について競争を回復させるために必要な措置を命ずることができる。ただし、当該措置により、当該事業者につき、その供給する商品若しくは役務の供給に要する費用の著しい上昇をもたらす程度に事業の規模が縮小し、経理が不健全になり、又は国際競争力の維持が困難になると認められる場合及び当該商品又は役務について競争を回復するに足りると認められる他の措置が講ぜられる場合は、この限りでない。
○2 公正取引委員会は、前項の措置を命ずるに当たつては、次の各号に掲げる事項に基づき、当該事業者及び関連事業者の事業活動の円滑な遂行並びに当該事業者に雇用されている者の生活の安定について配慮しなければならない。
一 資産及び収支その他の経理の状況
二 役員及び従業員の状況
三 工場、事業場及び事務所の位置その他の立地条件
四 事業設備の状況
五 特許権、商標権その他の無体財産権の内容及び技術上の特質
六 生産、販売等の能力及び状況
七 資金、原材料等の取得の能力及び状況
八 商品又は役務の供給及び流通の状況

   第四章 株式の保有、役員の兼任、合併、分割及び事業の譲受け

第九条 他の国内の会社の株式(社員の持分を含む。以下同じ。)を所有することにより事業支配力が過度に集中することとなる会社は、これを設立してはならない。
○2 会社(外国会社を含む。以下同じ。)は、他の国内の会社の株式を取得し、又は所有することにより国内において事業支配力が過度に集中することとなる会社となつてはならない。
○3 前二項において「事業支配力が過度に集中すること」とは、会社及び子会社その他当該会社が株式の所有により事業活動を支配している他の国内の会社の総合的事業規模が相当数の事業分野にわたつて著しく大きいこと、これらの会社の資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きいこと又はこれらの会社が相互に関連性のある相当数の事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めていることにより、国民経済に大きな影響を及ぼし、公正かつ自由な競争の促進の妨げとなることをいう。
○4 会社及びその一若しくは二以上の子会社又は会社の一若しくは二以上の子会社が総株主の議決権の過半数を有する他の国内の会社は、当該会社の子会社とみなして、この条の規定を適用する。この場合において、会社及びその一若しくは二以上の子会社又は会社の一若しくは二以上の子会社が有する議決権には、社債、株式等の振替に関する法律第百四十七条第一項又は第百四十八条第一項の規定により発行者に対抗することができない株式に係る議決権を含むものとする。
○5 次に掲げる会社は、当該会社及びその子会社の総資産の額(公正取引委員会規則で定める方法による資産の合計金額をいう。以下この項において同じ。)で国内の会社に係るものを公正取引委員会規則で定める方法により合計した額が、それぞれ当該各号に掲げる金額を下回らない範囲内において政令で定める金額を超える場合には、毎事業年度終了の日から三月以内に、公正取引委員会規則で定めるところにより、当該会社及びその子会社の事業に関する報告書を公正取引委員会に提出しなければならない。ただし、当該会社が他の会社の子会社である場合は、この限りでない。
一 子会社の株式の取得価額(最終の貸借対照表において別に付した価額があるときは、その価額)の合計額の当該会社の総資産の額に対する割合が百分の五十を超える会社(次号において「持株会社」という。) 六千億円
二 銀行業、保険業又は第一種金融商品取引業(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二十八条第一項に規定する第一種金融商品取引業をいう。次条第二項において同じ。)を営む会社(持株会社を除く。) 八兆円
三 前二号に掲げる会社以外の会社 二兆円
○6 新たに設立された会社は、当該会社がその設立時において前項に規定する場合に該当するときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、その設立の日から三十日以内に、その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。

第十条 会社は、他の会社の株式を取得し、又は所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不公正な取引方法により他の会社の株式を取得し、又は所有してはならない。
○2 会社であつて、その総資産の額(最終の貸借対照表による資産の合計金額をいう。以下同じ。)が二十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、当該会社並びに当該会社の子会社及び当該会社の総株主の議決権の過半数を有する国内の会社の総資産の額を合計した額(以下「総資産合計額」という。)が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるもの(以下この条において「株式所有会社」という。)は、他の国内の会社であつてその総資産の額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるもの(以下この項において「株式発行会社」という。)の株式を取得し、又は所有する場合(金銭又は有価証券の信託に係る株式について、自己が、委託者若しくは受益者となり議決権を行使することができる場合又は議決権の行使について受託者に指図を行うことができる場合を含む。)において、株式発行会社の総株主の議決権に占める株式所有会社の当該取得し、又は所有する株式に係る議決権(社債、株式等の振替に関する法律第百四十七条第一項又は第百四十八条第一項の規定により発行者に対抗することができない株式に係る議決権を含む。)の割合が、百分の十を下回らない範囲内において政令で定める数値(複数の数値を定めた場合にあつては、政令で定めるところにより、それぞれの数値)を超えることとなるときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、その超えることとなつた日から三十日以内に、当該株式に関する報告書を公正取引委員会に提出しなければならない。ただし、株式発行会社の発行済の株式の全部をその設立と同時に取得する場合、銀行業又は保険業を営む会社(保険業を営む会社にあつては、公正取引委員会規則で定める会社を除く。次条第一項及び第二項において同じ。)が他の国内の会社(銀行業又は保険業を営む会社その他公正取引委員会規則で定める会社を除く。次条第一項及び第二項において同じ。)の株式を取得し、又は所有する場合及び第一種金融商品取引業を営む会社が業務として株式を取得し、又は所有する場合は、この限りでない。
○3 前項の場合において、国内の会社が有する議決権には、社債、株式等の振替に関する法律第百四十七条第一項又は第百四十八条第一項の規定により発行者に対抗することができない株式に係る議決権を含むものとする。
○4 第二項の規定は、株式所有会社が、他の外国会社であつてその国内の営業所(当該外国会社の子会社の営業所を含む。)の最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高(以下「国内売上高」という。)が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるものの株式を取得し、又は所有する場合に準用する。

第十一条 銀行業又は保険業を営む会社は、他の国内の会社の議決権をその総株主の議決権の百分の五(保険業を営む会社にあつては、百分の十。次項において同じ。)を超えて有することとなる場合には、その議決権を取得し、又は保有してはならない。ただし、公正取引委員会規則で定めるところによりあらかじめ公正取引委員会の認可を受けた場合及び次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 担保権の行使又は代物弁済の受領により株式を取得し、又は所有することにより議決権を取得し、又は保有する場合
二 他の国内の会社が自己の株式の取得を行つたことにより、その総株主の議決権に占める所有する株式に係る議決権の割合が増加した場合
三 金銭又は有価証券の信託に係る信託財産として株式を取得し、又は所有することにより議決権を取得し、又は保有する場合
四 投資事業有限責任組合の有限責任組合員(以下この号において「有限責任組合員」という。)となり、組合財産として株式を取得し、又は所有することにより議決権を取得し、又は保有する場合。ただし、有限責任組合員が議決権を行使することができる場合、議決権の行使について有限責任組合員が投資事業有限責任組合の無限責任組合員に指図を行うことができる場合及び当該議決権を有することとなつた日から政令で定める期間を超えて当該議決権を保有する場合を除く。
五 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項に規定する組合契約で会社に対する投資事業を営むことを約するものによつて成立する組合(一人又は数人の組合員にその業務の執行を委任しているものに限る。)の組合員(業務の執行を委任された者を除く。以下この号において「非業務執行組合員」という。)となり、組合財産として株式を取得し、又は所有することにより議決権を取得し、又は保有する場合。ただし、非業務執行組合員が議決権を行使することができる場合、議決権の行使について非業務執行組合員が業務の執行を委任された者に指図を行うことができる場合及び当該議決権を有することとなつた日から前号の政令で定める期間を超えて当該議決権を保有する場合を除く。
六 前各号に掲げる場合のほか、他の国内の会社の事業活動を拘束するおそれがない場合として公正取引委員会規則で定める場合
○2 前項第一号から第三号まで及び第六号の場合(同項第三号の場合にあつては、当該議決権を取得し、又は保有する者以外の委託者又は受益者が議決権を行使することができる場合及び議決権の行使について当該委託者又は受益者が受託者に指図を行うことができる場合を除く。)において、他の国内の会社の議決権をその総株主の議決権の百分の五を超えて有することとなつた日から一年を超えて当該議決権を保有しようとするときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ公正取引委員会の認可を受けなければならない。この場合における公正取引委員会の認可は、同項第三号の場合を除き、銀行業又は保険業を営む会社が当該議決権を速やかに処分することを条件としなければならない。
○3 公正取引委員会は、前二項の認可をしようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣に協議しなければならない。
○4 前項の内閣総理大臣の権限は、金融庁長官に委任する。

第十二条 削除

第十三条 会社の役員又は従業員(継続して会社の業務に従事する者であつて、役員以外の者をいう。以下この条において同じ。)は、他の会社の役員の地位を兼ねることにより一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該役員の地位を兼ねてはならない。
○2 会社は、不公正な取引方法により、自己と国内において競争関係にある他の会社に対し、自己の役員がその会社の役員若しくは従業員の地位を兼ね、又は自己の従業員がその会社の役員の地位を兼ねることを認めるべきことを強制してはならない。

第十四条 会社以外の者は、会社の株式を取得し、又は所有することにより一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不公正な取引方法により会社の株式を取得し、又は所有してはならない。

第十五条 会社は、次の各号の一に該当する場合には、合併をしてはならない。
一 当該合併によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合
二 当該合併が不公正な取引方法によるものである場合
○2 国内の会社は、合併をしようとする場合において、当該合併をしようとする会社(以下この条において「合併会社」という。)のうち、いずれか一の会社に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、他のいずれか一の会社に係る総資産合計額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ当該合併に関する計画を公正取引委員会に届け出なければならない。ただし、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
一 合併会社のうち、いずれか一の会社が他のすべての会社のそれぞれの総株主の議決権の過半数を有している場合
二 合併会社のそれぞれの総株主の議決権の過半数を有する会社が同一の会社である場合
○3 前項の場合において、会社が有する議決権には、社債、株式等の振替に関する法律第百四十七条第一項又は第百四十八条第一項の規定により発行者に対抗することができない株式に係る議決権を含むものとする。
○4 前二項の規定は、外国会社が合併をしようとする場合に準用する。この場合において、第二項中「総資産合計額」とあるのは、「国内売上高」と読み替えるものとする。
○5 第二項(前項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による届出を行つた会社は、届出受理の日から三十日を経過するまでは、合併をしてはならない。ただし、公正取引委員会は、その必要があると認める場合には、当該期間を短縮することができる。
○6 公正取引委員会は、第十七条の二第一項の規定により当該合併に関し必要な措置を命じようとする場合には、前項本文に規定する三十日の期間又は同項ただし書の規定により短縮された期間(公正取引委員会が合併会社のうち少なくとも一の会社に対してそれぞれの期間内に公正取引委員会規則で定めるところにより必要な報告、情報又は資料の提出(以下この項において「報告等」という。)を求めた場合においては、前項の届出受理の日から百二十日を経過した日とすべての報告等を受理した日から九十日を経過した日とのいずれか遅い日までの期間)内に、合併会社に対し、第四十九条第五項の規定による通知をしなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 第二項(第四項において読み替えて準用する場合を含む。次号において同じ。)の規定により届け出た合併に関する計画のうち、第一項の規定に照らして重要な事項が当該計画において行われることとされている期限までに行われなかつた場合
二 第二項の規定により届け出た合併に関する計画のうち、重要な事項につき虚偽の記載があつた場合
○7 前項第一号の規定に該当する場合において、公正取引委員会は、第十七条の二第一項の規定により当該合併に関し必要な措置を命じようとするときは、同号の期限から起算して一年以内に前項本文の通知をしなければならない。

第十五条の二 会社は、次の各号のいずれかに該当する場合には、共同新設分割(会社が他の会社と共同してする新設分割をいう。以下同じ。)をし、又は吸収分割をしてはならない。
一 当該共同新設分割又は当該吸収分割によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合
二 当該共同新設分割又は当該吸収分割が不公正な取引方法によるものである場合
○2 国内の会社は、共同新設分割をしようとする場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ当該共同新設分割に関する計画を公正取引委員会に届け出なければならない。
一 当該共同新設分割をしようとする会社のうち、いずれか一の会社(当該共同新設分割で設立する会社にその事業の全部を承継させようとするもの(以下この項において「全部承継会社」という。)に限る。)に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、他のいずれか一の会社(全部承継会社に限る。)に係る総資産合計額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき。
二 当該共同新設分割をしようとする会社のうち、いずれか一の会社(全部承継会社に限る。)に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、他のいずれか一の会社(当該共同新設分割で設立する会社にその事業の重要部分を承継させようとするもの(以下この項において「重要部分承継会社」という。)に限る。)の当該承継の対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき。
三 当該共同新設分割をしようとする会社のうち、いずれか一の会社(全部承継会社に限る。)に係る総資産合計額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、他のいずれか一の会社(重要部分承継会社に限る。)の当該承継の対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき(前号に該当するときを除く。)。
四 当該共同新設分割をしようとする会社のうち、いずれか一の会社(重要部分承継会社に限る。)の当該承継の対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、他のいずれか一の会社(重要部分承継会社に限る。)の当該承継の対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき。
○3 国内の会社は、吸収分割をしようとする場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ当該吸収分割に関する計画を公正取引委員会に届け出なければならない。
一 当該吸収分割をしようとする会社のうち、分割をしようとするいずれか一の会社(当該吸収分割でその事業の全部を承継させようとするもの(次号において「全部承継会社」という。)に限る。)に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、分割によつて事業を承継しようとする会社に係る総資産合計額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき。
二 当該吸収分割をしようとする会社のうち、分割をしようとするいずれか一の会社(全部承継会社に限る。)に係る総資産合計額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、分割によつて事業を承継しようとする会社に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき(前号に該当するときを除く。)。
三 当該吸収分割をしようとする会社のうち、分割をしようとするいずれか一の会社(当該吸収分割でその事業の重要部分を承継させようとするもの(次号において「重要部分承継会社」という。)に限る。)の当該分割の対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、分割によつて事業を承継しようとする会社に係る総資産合計額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき。
四 当該吸収分割をしようとする会社のうち、分割をしようとするいずれか一の会社(重要部分承継会社に限る。)の当該分割の対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、分割によつて事業を承継しようとする会社に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき(前号に該当するときを除く。)。
○4 前二項の規定は、次の各号のいずれかに該当する場合には、適用しない。
一 共同新設分割をしようとし、又は吸収分割をしようとする会社のうち、いずれか一の会社が他のすべての会社のそれぞれの総株主の議決権の過半数を有している場合
二 共同新設分割をしようとし、又は吸収分割をしようとする会社のそれぞれの総株主の議決権の過半数を有する会社が同一の会社である場合
○5 前条第三項の規定は、前項の場合に準用する。
○6 第二項から前項までの規定は、外国会社が共同新設分割をしようとし、又は吸収分割をしようとする場合に準用する。この場合において、第二項及び第三項中「総資産合計額」及び「最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高」とあるのは、「国内売上高」と読み替えるものとする。
○7 前条第五項から第七項までの規定は、第二項及び第三項(前項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による届出に係る共同新設分割及び吸収分割の制限並びに公正取引委員会がする第十七条の二第一項の規定による命令について準用する。この場合において、前条第五項及び第七項中「合併」とあるのは「共同新設分割又は吸収分割」と、同条第六項中「合併に」とあるのは「共同新設分割又は吸収分割に」と、「合併会社」とあるのは「共同新設分割をしようとし、又は吸収分割をしようとする会社」と読み替えるものとする。

第十六条 会社は、次に掲げる行為をすることにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該行為をしてはならず、及び不公正な取引方法により次に掲げる行為をしてはならない。
一 他の会社の事業の全部又は重要部分の譲受け
二 他の会社の事業上の固定資産の全部又は重要部分の譲受け
三 他の会社の事業の全部又は重要部分の賃借
四 他の会社の事業の全部又は重要部分についての経営の受任
五 他の会社と事業上の損益全部を共通にする契約の締結
○2 会社であつて、その会社に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるもの(第五項において「譲受会社」という。)は、次の各号の一に該当する場合には、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ事業又は事業上の固定資産(以下この条において「事業等」という。)の譲受けに関する計画を公正取引委員会に届け出なければならない。
一 総資産の額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超える他の国内の会社の事業の全部の譲受けをしようとする場合
二 他の国内の会社の事業の重要部分又は事業上の固定資産の全部若しくは重要部分の譲受けをしようとする場合であつて、当該譲受けの対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき。
○3 前項の規定は、次の各号の一に該当する場合には適用しない。
一 事業等の譲受けをしようとする会社及び当該事業等の譲渡をしようとする会社のうち、いずれか一の会社が他のすべての会社のそれぞれの総株主の議決権の過半数を有している場合
二 事業等の譲受けをしようとする会社及び当該事業等の譲渡をしようとする会社のそれぞれの総株主の議決権の過半数を有する会社が同一の会社である場合
○4 第十五条第三項の規定は、前項の場合に準用する。
○5 前三項の規定は、譲受会社が他の外国会社の事業等の譲受けをしようとする場合に準用する。この場合において、第二項第一号中「総資産の額」とあり、同項第二号中「最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高」とあるのは、「国内売上高」と読み替えるものとする。
○6 第十五条第五項から第七項までの規定は、第二項(前項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による届出に係る事業等の譲受けの制限及び公正取引委員会がする第十七条の二第一項の規定による命令について準用する。この場合において、第十五条第五項及び第七項中「合併」とあるのは「事業又は事業上の固定資産の譲受け」と、同条第六項中「合併に」とあるのは「事業又は事業上の固定資産の譲受けに」と、「合併会社のうち少なくとも一の会社に」とあり、及び「合併会社に」とあるのは「事業又は事業上の固定資産の譲受けをしようとする会社に」と読み替えるものとする。

第十七条 何らの名義を以てするかを問わず、第九条から前条までの規定による禁止又は制限を免れる行為をしてはならない。

第十七条の二 第十条第一項、第十一条第一項、第十五条第一項、第十五条の二第一項、第十六条第一項又は前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、株式の全部又は一部の処分、事業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
○2 第九条第一項若しくは第二項、第十三条、第十四条又は前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該違反行為者に対し、株式の全部又は一部の処分、会社の役員の辞任その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。

第十八条 公正取引委員会は、第十五条第二項(同条第四項において読み替えて準用する場合を含む。)及び第五項の規定に違反して会社が合併した場合においては、合併の無効の訴えを提起することができる。
○2 前項の規定は、第十五条の二第二項及び第三項(これらの規定を同条第六項において読み替えて準用する場合を含む。)並びに同条第七項において読み替えて準用する第十五条第五項の規定に違反して会社が共同新設分割又は吸収分割をした場合に準用する。この場合において、前項中「合併の無効の訴え」とあるのは、「共同新設分割又は吸収分割の無効の訴え」と読み替えるものとする。

   第五章 不公正な取引方法

第十九条 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

第二十条 前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該行為の差止め、契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
○2 第七条第二項の規定は、前条の規定に違反する行為に準用する。

   第六章 適用除外

第二十一条 この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。

第二十二条 この法律の規定は、次の各号に掲げる要件を備え、かつ、法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行為には、これを適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、この限りでない。
一 小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること。
二 任意に設立され、かつ、組合員が任意に加入し、又は脱退することができること。
三 各組合員が平等の議決権を有すること。
四 組合員に対して利益分配を行う場合には、その限度が法令又は定款に定められていること。

第二十三条 この法律の規定は、公正取引委員会の指定する商品であつて、その品質が一様であることを容易に識別することができるものを生産し、又は販売する事業者が、当該商品の販売の相手方たる事業者とその商品の再販売価格(その相手方たる事業者又はその相手方たる事業者の販売する当該商品を買い受けて販売する事業者がその商品を販売する価格をいう。以下同じ。)を決定し、これを維持するためにする正当な行為については、これを適用しない。ただし、当該行為が一般消費者の利益を不当に害することとなる場合及びその商品を販売する事業者がする行為にあつてはその商品を生産する事業者の意に反してする場合は、この限りでない。
○2 公正取引委員会は、次の各号に該当する場合でなければ、前項の規定による指定をしてはならない。
一 当該商品が一般消費者により日常使用されるものであること。
二 当該商品について自由な競争が行われていること。
○3 第一項の規定による指定は、告示によつてこれを行う。
○4 著作物を発行する事業者又はその発行する物を販売する事業者が、その物の販売の相手方たる事業者とその物の再販売価格を決定し、これを維持するためにする正当な行為についても、第一項と同様とする。
○5 第一項又は前項に規定する販売の相手方たる事業者には、次に掲げる法律の規定に基づいて設立された団体を含まないものとする。ただし、第八号及び第八号の二に掲げる法律の規定に基づいて設立された団体にあつては、事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会、商工組合又は商工組合連合会が当該事業協同組合、協同組合連合会、商工組合又は商工組合連合会を直接又は間接に構成する者の消費の用に供する第二項に規定する商品又は第四項に規定する物を買い受ける場合に限る。
一 国家公務員法
二 農業協同組合法
三 国家公務員共済組合法
三の二 地方公務員等共済組合法
四 消費生活協同組合法
五 水産業協同組合法
六 特定独立行政法人等の労働関係に関する法律
七 労働組合法
八 中小企業等協同組合法
八の二 中小企業団体の組織に関する法律
九 地方公務員法
十 森林組合法
十一 地方公営企業等の労働関係に関する法律
○6 第一項に規定する事業者は、同項に規定する再販売価格を決定し、これを維持するための契約をしたときは、公正取引委員会規則の定めるところにより、その契約の成立の日から三十日以内に、その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。ただし、公正取引委員会規則の定める場合は、この限りでない。

   第七章 差止請求及び損害賠償

第二十四条 第八条第五号又は第十九条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、これにより著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

第二十五条 第三条、第六条又は第十九条の規定に違反する行為をした事業者(第六条の規定に違反する行為をした事業者にあつては、当該国際的協定又は国際的契約において、不当な取引制限をし、又は不公正な取引方法を自ら用いた事業者に限る。)及び第八条の規定に違反する行為をした事業者団体は、被害者に対し、損害賠償の責めに任ずる。
○2 事業者及び事業者団体は、故意又は過失がなかつたことを証明して、前項に規定する責任を免れることができない。

第二十六条 前条の規定による損害賠償の請求権は、第四十九条第一項に規定する排除措置命令(排除措置命令がされなかつた場合にあつては、第五十条第一項に規定する納付命令(第八条第一号又は第二号の規定に違反する行為をした事業者団体の構成事業者に対するものを除く。))又は第六十六条第四項の審決が確定した後でなければ、裁判上これを主張することができない。
○2 前項の請求権は、同項の排除措置命令若しくは納付命令又は審決が確定した日から三年を経過したときは、時効によつて消滅する。

   第八章 公正取引委員会

    第一節 設置、任務及び所掌事務並びに組織等

第二十七条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第三項の規定に基づいて、第一条の目的を達成することを任務とする公正取引委員会を置く。
○2 公正取引委員会は、内閣総理大臣の所轄に属する。

第二十七条の二 公正取引委員会は、前条第一項の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
一 私的独占の規制に関すること。
二 不当な取引制限の規制に関すること。
三 不公正な取引方法の規制に関すること。
四 独占的状態に係る規制に関すること。
五 所掌事務に係る国際協力に関すること。
六 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき、公正取引委員会に属させられた事務

第二十八条 公正取引委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。

第二十九条 公正取引委員会は、委員長及び委員四人を以て、これを組織する。
○2 委員長及び委員は、年齢が三十五年以上で、法律又は経済に関する学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が、両議院の同意を得て、これを任命する。
○3 委員長の任免は、天皇が、これを認証する。
○4 委員長及び委員は、これを官吏とする。

第三十条 委員長及び委員の任期は、五年とする。但し、補欠の委員長及び委員の任期は、前任者の残任期間とする。
○2 委員長及び委員は、再任されることができる。
○3 委員長及び委員は、年齢が七十年に達したときには、その地位を退く。
○4 委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のため両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前条第二項に規定する資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができる。この場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。

第三十一条 委員長及び委員は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
一 破産手続開始の決定を受けた場合
二 懲戒免官の処分を受けた場合
三 この法律の規定に違反して刑に処せられた場合
四 禁錮以上の刑に処せられた場合
五 公正取引委員会により、心身の故障のため職務を執ることができないと決定された場合
六 前条第四項の場合において、両議院の事後の承認を得られなかつたとき。

第三十二条 前条第一号又は第三号から第六号までの場合においては、内閣総理大臣は、その委員長又は委員を罷免しなければならない。

第三十三条 委員長は、公正取引委員会の会務を総理し、公正取引委員会を代表する。
○2 公正取引委員会は、あらかじめ委員のうちから、委員長が故障のある場合に委員長を代理する者を定めておかなければならない。

第三十四条 公正取引委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、議事を開き、議決することができない。
○2 公正取引委員会の議事は、出席者の過半数を以て、これを決する。可否同数のときは、委員長の決するところによる。
○3 公正取引委員会が第三十一条第五号の規定による決定をするには、前項の規定にかかわらず、本人を除く全員の一致がなければならない。
○4 委員長が故障のある場合の第一項の規定の適用については、前条第二項に規定する委員長を代理する者は、委員長とみなす。

第三十五条 公正取引委員会の事務を処理させるため、公正取引委員会に事務総局を置く。
○2 事務総局に事務総長を置く。
○3 事務総長は、事務総局の局務(第五十六条第一項の規定により、公正取引委員会が審判官を指定して行わせることとした事務を除く。)を統理する。
○4 事務総局に官房及び局を置く。
○5 内閣府設置法第十七条第二項から第八項までの規定は、前項の官房及び局の設置、所掌事務の範囲及び内部組織について準用する。
○6 第四項の規定に基づき置かれる官房及び局の数は、三以内とする。
○7 審判手続(審決を除く。)の全部又は一部を行わせるため、事務総局に審判官を置く。
○8 審判官の定数は、政令で定める。
○9 審判官は、事務総局の職員のうち、審判手続を行うについて必要な法律及び経済に関する知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができると認められる者について、公正取引委員会が定める。
○10 事務総局の職員中には、検察官、任命の際現に弁護士たる者又は弁護士の資格を有する者を加えなければならない。
○11 前項の検察官たる職員の掌る職務は、この法律の規定に違反する事件に関するものに限る。

第三十五条の二 公正取引委員会の事務総局の地方機関として、所要の地に地方事務所を置く。
○2 前項の地方事務所の名称、位置及び管轄区域は、政令で定める。
○3 第一項の地方事務所には、所要の地にその支所を置き、地方事務所の事務を分掌させることができる。
○4 前項の支所の名称、位置及び管轄区域は、内閣府令で定める。

第三十六条 委員長及び委員の報酬は、別に定める。
○2 委員長及び委員の報酬は、在任中、その意に反してこれを減額することができない。

第三十七条 委員長、委員及び政令で定める公正取引委員会の職員は、在任中、次の各号のいずれかに該当する行為をすることができない。
一 国会若しくは地方公共団体の議会の議員となり、又は積極的に政治運動をすること。
二 内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬のある他の職務に従事すること。
三 商業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと。

第三十八条 委員長、委員及び公正取引委員会の職員は、事件に関する事実の有無又は法令の適用について、意見を外部に発表してはならない。但し、この法律に規定する場合又はこの法律に関する研究の結果を発表する場合は、この限りでない。

第三十九条 委員長、委員及び公正取引委員会の職員並びに委員長、委員又は公正取引委員会の職員であつた者は、その職務に関して知得した事業者の秘密を他に漏し、又は窃用してはならない。

第四十条 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、事業者若しくは事業者の団体又はこれらの職員に対し、出頭を命じ、又は必要な報告、情報若しくは資料の提出を求めることができる。

第四十一条 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、学校、事業者、事業者の団体、学識経験ある者その他の者に対し、必要な調査を嘱託することができる。

第四十二条 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公聴会を開いて一般の意見を求めることができる。

第四十三条 公正取引委員会は、この法律の適正な運用を図るため、事業者の秘密を除いて、必要な事項を一般に公表することができる。

第四十三条の二 公正取引委員会は、この法律に相当する外国の法令を執行する当局(以下この条において「外国競争当局」という。)に対し、その職務(この法律に規定する公正取引委員会の職務に相当するものに限る。次項において同じ。)の遂行に資すると認める情報の提供を行うことができる。ただし、当該情報の提供を行うことが、この法律の適正な執行に支障を及ぼし、その他我が国の利益を侵害するおそれがあると認められる場合は、この限りでない。
○2 公正取引委員会は、外国競争当局に対し前項に規定する情報の提供を行うに際し、次に掲げる事項を確認しなければならない。
一 当該外国競争当局が、公正取引委員会に対し、前項に規定する情報の提供に相当する情報の提供を行うことができること。
二 当該外国において、前項の規定により提供する情報のうち秘密として提供するものについて、当該外国の法令により、我が国と同じ程度の秘密の保持が担保されていること。
三 当該外国競争当局において、前項の規定により提供する情報が、その職務の遂行に資する目的以外の目的で使用されないこと。
○3 第一項の規定により提供される情報については、外国における裁判所又は裁判官の行う刑事手続に使用されないよう適切な措置がとられなければならない。

第四十四条 公正取引委員会は、内閣総理大臣を経由して、国会に対し、毎年この法律の施行の状況を報告しなければならない。
○2 公正取引委員会は、内閣総理大臣を経由して国会に対し、この法律の目的を達成するために必要な事項に関し、意見を提出することができる。

    第二節 手続

第四十五条 何人も、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
○2 前項に規定する報告があつたときは、公正取引委員会は、事件について必要な調査をしなければならない。
○3 第一項の規定による報告が、公正取引委員会規則で定めるところにより、書面で具体的な事実を摘示してされた場合において、当該報告に係る事件について、適当な措置をとり、又は措置をとらないこととしたときは、公正取引委員会は、速やかに、その旨を当該報告をした者に通知しなければならない。
○4 公正取引委員会は、この法律の規定に違反する事実又は独占的状態に該当する事実があると思料するときは、職権をもつて適当な措置をとることができる。

第四十六条 公正取引委員会は、独占的状態に該当する事実があると思料する場合において、前条第四項の措置をとることとしたときは、その旨を当該事業者の営む事業に係る主務大臣に通知しなければならない。
○2 前項の通知があつた場合には、当該主務大臣は、公正取引委員会に対し、独占的状態の有無及び第八条の四第一項ただし書に規定する競争を回復するに足りると認められる他の措置に関し意見を述べることができる。

第四十七条 公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる。
一 事件関係人又は参考人に出頭を命じて審尋し、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること。
二 鑑定人に出頭を命じて鑑定させること。
三 帳簿書類その他の物件の所持者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出物件を留めて置くこと。
四 事件関係人の営業所その他必要な場所に立ち入り、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査すること。
○2 公正取引委員会が相当と認めるときは、政令で定めるところにより、公正取引委員会の職員を審査官に指定し、前項の処分をさせることができる。
○3 前項の規定により職員に立入検査をさせる場合においては、これに身分を示す証明書を携帯させ、関係者に提示させなければならない。
○4 第一項の規定による処分の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

第四十八条 公正取引委員会は、事件について必要な調査をしたときは、その要旨を調書に記載し、かつ、特に前条第一項に規定する処分があつたときは、処分をした年月日及びその結果を明らかにしておかなければならない。

第四十九条 第七条第一項若しくは第二項(第八条の二第二項及び第二十条第二項において準用する場合を含む。)、第八条の二第一項若しくは第三項、第十七条の二又は第二十条第一項の規定による命令(以下「排除措置命令」という。)は、文書によつてこれを行い、排除措置命令書には、違反行為を排除し、又は違反行為が排除されたことを確保するために必要な措置並びに公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用を示し、委員長及び第六十九条第一項の規定による合議に出席した委員がこれに記名押印しなければならない。
○2 排除措置命令は、その名あて人に排除措置命令書の謄本を送達することによつて、その効力を生ずる。
○3 公正取引委員会は、排除措置命令をしようとするときは、当該排除措置命令の名あて人となるべき者に対し、あらかじめ、意見を述べ、及び証拠を提出する機会を付与しなければならない。
○4 排除措置命令の名あて人となるべき者は、前項の規定により意見を述べ、又は証拠を提出するに当たつては、代理人(弁護士、弁護士法人又は公正取引委員会の承認を得た適当な者に限る。第五十二条第一項、第五十七条、第五十九条、第六十条及び第六十三条において同じ。)を選任することができる。
○5 公正取引委員会は、第三項の規定による意見を述べ、及び証拠を提出する機会を付与するときは、その意見を述べ、及び証拠を提出することができる期限までに相当な期間をおいて、排除措置命令の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 予定される排除措置命令の内容
二 公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用
三 公正取引委員会に対し、前二号に掲げる事項について、意見を述べ、及び証拠を提出することができる旨並びにその期限
○6 排除措置命令に不服がある者は、公正取引委員会規則で定めるところにより、排除措置命令書の謄本の送達があつた日から六十日以内(天災その他この期間内に審判を請求しなかつたことについてやむを得ない理由があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して一週間以内)に、公正取引委員会に対し、当該排除措置命令について、審判を請求することができる。
○7 前項に規定する期間内に同項の規定による請求がなかつたときは、排除措置命令は、確定する。

第五十条 第七条の二第一項(同条第二項及び第八条の三において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による命令(以下「納付命令」という。)は、文書によつてこれを行い、課徴金納付命令書には、納付すべき課徴金の額及びその計算の基礎、課徴金に係る違反行為並びに納期限を記載し、委員長及び第六十九条第一項の規定による合議に出席した委員がこれに記名押印しなければならない。
○2 納付命令は、その名あて人に課徴金納付命令書の謄本を送達することによつて、その効力を生ずる。
○3 第一項の課徴金の納期限は、課徴金納付命令書の謄本を発する日から三月を経過した日とする。
○4 納付命令に不服がある者は、公正取引委員会規則で定めるところにより、課徴金納付命令書の謄本の送達があつた日から六十日以内(天災その他この期間内に審判を請求しなかつたことについてやむを得ない理由があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して一週間以内)に、公正取引委員会に対し、当該納付命令について、審判を請求することができる。
○5 前項に規定する期間内に同項の規定による請求がなかつたときは、納付命令は、確定する。
○6 前条第三項から第五項までの規定は、納付命令について準用する。この場合において、同項第一号中「予定される排除措置命令の内容」とあるのは「納付を命じようとする課徴金の額」と、同項第二号中「公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用」とあるのは「課徴金の計算の基礎及びその課徴金に係る違反行為」と読み替えるものとする。

第五十一条 第七条の二第一項(同条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定により公正取引委員会が納付命令を行つた後、同一事件について、当該納付命令を受けた者に対し、罰金の刑に処する確定裁判があつたときは、公正取引委員会は、審決で、当該納付命令に係る課徴金の額を、その額から当該裁判において命じられた罰金額の二分の一に相当する金額を控除した額に変更しなければならない。ただし、当該納付命令に係る課徴金の額が当該罰金額の二分の一に相当する金額を超えないとき、又は当該変更後の額が百万円未満となるときは、この限りでない。
○2 前項ただし書の場合においては、公正取引委員会は、審決で、当該納付命令を取り消さなければならない。
○3 第一項本文の場合において、当該納付命令に係る審判手続が終了していないときは、公正取引委員会は、同項本文の規定にかかわらず、当該納付命令に係る審判の請求に対する審決において、当該納付命令に係る課徴金の額を当該審判手続を経て決定された額から同項本文に規定する罰金額の二分の一に相当する金額を控除した額に変更するものとする。
○4 公正取引委員会は、前三項の場合において、変更又は取消し前の納付命令に基づき既に納付された金額(第七十条の九第三項に規定する延滞金を除く。)で、還付すべきものがあるときは、遅滞なく、金銭で還付しなければならない。

第五十二条 第四十九条第六項又は第五十条第四項の規定による審判の請求(以下「審判請求」という。)をする者は、次に掲げる事項を記載した請求書を公正取引委員会に提出しなければならない。
一 審判請求をする者及びその代理人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 審判請求に係る命令
三 審判請求の趣旨及び理由
○2 前項第三号に規定する趣旨は、命令の取消し又は変更を求める範囲を明らかにするように記載するものとし、同号に規定する理由においては、排除措置命令又は納付命令(第五項、第五十八条、第五十九条第一項、第六十六条第三項及び第四項並びに第七十条の八において「原処分」という。)に対する主張(排除措置命令にあつてはその原因となる事実に対する主張、納付命令にあつては課徴金の計算の基礎に対する主張)が明らかにされていなければならない。
○3 審判請求があつた場合においては、公正取引委員会は、第六十六条第一項の規定に該当する場合を除き、遅滞なく、当該審判請求に係る命令について審判手続を開始しなければならない。
○4 審判請求は、当該審判請求に係る命令についての最終の審判の期日までは、いつでも、書面により取り下げることができる。
○5 第五十五条第三項の規定により審判手続が開始された後、前項の取下げがあつたときは、原処分は、確定する。

第五十三条 独占的状態があると認める場合(第八条の四第一項ただし書に規定する場合を除く。第六十七条第一項において同じ。)において、事件を審判手続に付することが公共の利益に適合すると認めるときは、公正取引委員会は、当該事件について審判手続を開始することができる。
○2 公正取引委員会は、前項の規定により審判手続を開始しようとするときは、当該事業者の営む事業に係る主務大臣に協議しなければならない。

第五十四条 公正取引委員会は、排除措置命令に係る審判請求があつた場合において必要と認めるときは、当該排除措置命令の全部又は一部の執行を停止することができる。
○2 前項の規定により執行を停止した場合において、当該執行の停止により市場における競争の確保が困難となるおそれがあるときその他必要があると認めるときは、公正取引委員会は、当該執行の停止を取り消すものとする。

第五十五条 公正取引委員会は、第五十二条第三項の規定により審判手続を開始するときは、審判請求をした者に対し、その旨を記載した審判開始通知書を送付しなければならない。
○2 第五十三条第一項の規定による審判開始決定は、文書によつてこれを行い、審判開始決定書には、事件の要旨及び第八条の四第一項に規定する措置の名あて人の氏名又は名称を記載し、かつ、委員長及び決定の議決に参加した委員がこれに記名押印しなければならない。
○3 審判手続は、第一項の審判請求をした者に審判開始通知書を送付し、又は前項の名あて人に審判開始決定書の謄本を送達することにより、開始する。
○4 第一項の審判請求をした者又は第二項の名あて人(以下「被審人」という。)には、審判の期日に出頭すべき旨を命じなければならない。
○5 審判の期日は、審判開始通知書を発した日又は審判開始決定書の謄本を発した日から三十日後に、これを定めなければならない。ただし、被審人の同意を得たときは、この限りでない。
○6 第二項に規定する審判開始決定書の謄本の送達を受けた者は、これに対する答弁書を遅滞なく公正取引委員会に提出しなければならない。

第五十六条 公正取引委員会は、審判手続を開始した後、事件ごとに審判官を指定し、公正取引委員会規則で定めるところにより、第四十一条の規定による調査の嘱託及び第四十七条第一項各号に掲げる処分のほか、その後の審判手続(審決を除く。次項、第六十三条及び第六十四条において同じ。)の全部又は一部を行わせることができる。ただし、当該事件について審査官の職務を行つたことのある者その他当該事件の審査に関与したことのある者については、指定することができない。
○2 前項の規定により指定された審判官(複数の者が指定された場合にあつては、そのうち指名された一人の者)は、公正取引委員会規則で定めるところにより、同項の規定に基づき公正取引委員会が行わせることとした審判手続に係る事務を指揮するものとする。

第五十七条 公正取引委員会又は審判官は、被審人又はその代理人が、正当な理由がなく、審判の期日に出頭しないときにおいても、審判を行うことができる。

第五十八条 第四十七条第二項の規定により指定された審査官は、審判に立ち会い、原処分の原因となる事実及び法令の適用並びに原処分が相当であること(当該審判が第八条の四第一項に係る事件についての審判である場合にあつては、独占的状態に該当する事実)について主張し、証拠の申出その他必要な行為をすることができる。
○2 審査官は、前項の場合において、原処分の原因となる事実及び法令の適用(当該審判が第八条の四第一項に係る事件についての審判である場合にあつては、独占的状態に該当する事実)について変更(公正取引委員会規則で定める範囲のものに限る。)の必要があると認めるときは、これを主張することができる。ただし、被審人の利益を害することとなる場合は、この限りでない。

第五十九条 被審人又はその代理人は、審判に際して、公正取引委員会が当該事件についてした原処分又は第八条の四第一項の規定により命じようとする措置が不当である理由を述べ、かつ、これを立証する資料を提出し、公正取引委員会に対し、必要な参考人を審尋し、鑑定人に鑑定を命じ、帳簿書類その他の物件の所持者に対し当該物件の提出を命じ、必要な場所に立ち入つて業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査し、若しくは調査を嘱託することを求め、又は公正取引委員会が出頭を命じた参考人若しくは鑑定人を審尋し、若しくは調査を嘱託された者に質問することができる。
○2 納付命令に係る審判手続において、被審人(第八条第一号又は第二号の規定に違反する行為をした事業者団体の構成事業者を除く。以下この項において同じ。)又はその代理人は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該納付命令に係る違反行為(第三号の場合にあつては、当該認定に係る部分に限る。)の不存在を主張することができない。
一 第四十九条第七項の規定により納付命令に係る違反行為についての排除措置命令が確定したとき。
二 被審人又はその代理人が納付命令に係る違反行為についての排除措置命令について、審判請求を取り下げたとき。
三 納付命令に係る違反行為についての排除措置命令に係る審決において、当該違反行為の全部又は一部が認定されたとき。

第六十条 公正取引委員会又は審判官は、審査官又は被審人若しくはその代理人から申出のあつた証拠を採用しないときは、その理由を示さなければならない。

第六十一条 審判は、これを公開しなければならない。ただし、事業者の事業上の秘密を保つため必要があると認めるとき、又は公益上必要があると認めるときは、これを公開しないことができる。
○2 審判においては、公正取引委員会規則で定めるところにより、調書を作成しなければならない。

第六十二条 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第百四十三条から第百四十七条まで、第百四十九条、第百五十四条から第百五十六条まで、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、公正取引委員会又は審判官が、審判に際して、参考人を審尋し、又は鑑定人に鑑定を命ずる手続について、これを準用する。
○2 前項の場合において、「裁判所」とあるのは「公正取引委員会又は審判官」と、「証人」とあるのは「参考人」と、「尋問」とあるのは「審尋」と、「被告人」とあるのは「被審人」とそれぞれ読み替えるものとする。

第六十三条 公正取引委員会は、第五十六条第一項の規定により審判官に審判手続の全部又は一部を行わせた場合において、被審人又はその代理人の申出があるときは、これらの者が直接公正取引委員会に対し陳述する機会を与えなければならない。ただし、第五十二条第三項の規定により納付命令に係る審判手続が開始された場合において、当該納付命令に係る違反行為についての排除措置命令に係る審決において当該違反行為が認定されているときは、この限りでない。

第六十四条 公正取引委員会又は審判官は、適当と認めるときは、職権で、審判手続を併合し、又は分離することができる。

第六十五条 公正取引委員会は、第八条の四第一項に係る事件について第五十三条第一項の規定により審判開始決定をした後、被審人が、審判開始決定書記載の事実及び法律の適用を認めて、公正取引委員会に対し、その後の審判手続を経ないで審決を受ける旨を文書をもつて申し出て、かつ、独占的状態に係る商品又は役務について競争を回復させるために自らとるべき具体的措置に関する計画書を提出した場合において、適当と認めたときは、その後の審判手続を経ないで当該計画書記載の具体的措置と同趣旨の審決をすることができる。

第六十六条 審判請求が法定の期間経過後にされたものであるときその他不適法であるときは、公正取引委員会は、審決で、当該審判請求を却下する。
○2 審判請求が理由がないときは、公正取引委員会は、審判手続を経た後、審決で、当該審判請求を棄却する。
○3 審判請求が理由があるときは、公正取引委員会は、審判手続を経た後、審決で、原処分の全部又は一部を取り消し、又はこれを変更する。
○4 公正取引委員会は、前項の規定により原処分の全部又は一部を取り消す場合において、当該原処分の時までに第三条、第六条、第八条、第九条第一項若しくは第二項、第十条第一項、第十一条第一項、第十三条、第十四条、第十五条第一項、第十五条の二第一項、第十六条第一項、第十七条又は第十九条の規定に違反する行為があり、かつ、当該原処分の時において既に当該行為がなくなつていると認めるときは、審決で、その旨を明らかにしなければならない。

第六十七条 公正取引委員会は、審判手続を経た後、独占的状態があると認める場合には、審決で、被審人に対し、第八条の四第一項に規定する措置を命じなければならない。
○2 公正取引委員会は、審判手続を経た後、審判開始決定の時までに独占的状態に該当する事実がなかつたと認める場合、審判開始決定の時までに独占的状態に該当する事実があり、かつ、既に独占的状態に該当する事実がなくなつていると認める場合又は独占的状態に該当する事実があつて第八条の四第一項ただし書に該当すると認める場合には、審決で、その旨を明らかにしなければならない。

第六十八条 第六十六条第二項から第四項まで及び前条の規定による審決においては、被審人が争わない事実及び公知の事実を除き、審判手続において取り調べた証拠によつて事実を認定しなければならない。

第六十九条 排除措置命令、納付命令及び審決は、委員長及び委員の合議によらなければならない。
○2 第三十四条第一項、第二項及び第四項の規定は、前項の合議にこれを準用する。
○3 第八条の四第一項の措置を命ずる審決をするには、前項において準用する第三十四条第二項の規定にかかわらず、三人以上の意見が一致しなければならない。

第七十条 公正取引委員会の合議は、これを公開しない。

第七十条の二 審決は、文書によつてこれを行い、審決書には、公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用並びに納付命令に係る第六十六条第三項の審決にあつては、課徴金の計算の基礎を示し、委員長及び合議に出席した委員がこれに署名押印しなければならない。
○2 審決書には、少数意見を付記することができる。
○3 審決は、被審人その他その名あて人に審決書の謄本を送達することによつて、その効力を生ずる。
○4 第八条の四第一項の措置を命ずる審決は、確定しなければ執行することができない。

第七十条の三 公正取引委員会は、必要があると認めるときは、職権で、審決の結果について関係のある第三者を当事者として審判手続に参加させることができる。ただし、あらかじめ被審人及び当該第三者を審尋しなければならない。

第七十条の四 関係のある公務所又は公共的な団体は、公益上必要があると認めるときは、公正取引委員会の承認を得て、当事者として審判手続に参加することができる。

第七十条の五 関係のある公務所又は公共的な団体は、公共の利益を保護するため、公正取引委員会に対して意見を述べることができる。

第七十条の六 公正取引委員会が排除措置命令をしたときは、被審人は、裁判所の定める保証金又は有価証券(社債、株式等の振替に関する法律第二百七十八条第一項に規定する振替債を含む。次条第一項及び第七十条の十四において同じ。)を供託して、当該排除措置命令が確定するまでその執行を免れることができる。
○2 前項の規定による裁判は、非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)により、これを行う。

第七十条の七 被審人が、前条第一項の規定により供託をした場合において、当該排除措置命令が確定したときは、裁判所は、公正取引委員会の申立てにより、供託に係る保証金又は有価証券の全部又は一部を没取することができる。
○2 前条第二項の規定は、前項の規定による裁判に、これを準用する。

第七十条の八 公正取引委員会は、排除措置命令(第四十九条第七項又は第五十二条第五項の規定により確定したものに限る。)又は第六十六条第一項から第三項までの審決(原処分の全部を取り消す審決を除く。)若しくは第六十五条若しくは第六十七条第一項の規定による審決をした後においても、特に必要があるときは、第四十七条の規定により、これらの命令又は審決において命じ、又は維持した措置が講じられているかどうかを確かめるために必要な処分をし、又はその職員をして処分をさせることができる。

第七十条の九 公正取引委員会は、課徴金をその納期限までに納付しない者があるときは、督促状により期限を指定してその納付を督促しなければならない。
○2 前項の規定にかかわらず、納付命令について審判請求がされたとき(第六十六条第一項の規定により当該審判請求が却下された場合を除く。次項において同じ。)は、公正取引委員会は、当該審判請求に対する審決をした後、同条第三項の規定により当該納付命令の全部を取り消す場合を除き、速やかに督促状により期限を指定して当該納付命令に係る課徴金及び次項の規定による延滞金があるときはその延滞金の納付を督促しなければならない。ただし、当該納付命令についての審判請求に対する審決書の謄本が送達された日までに当該課徴金及び延滞金の全部が納付されたときは、この限りでない。
○3 公正取引委員会は、課徴金をその納期限までに納付しない者があるときは、納期限の翌日からその納付の日までの日数に応じ、当該課徴金の額につき年十四・五パーセントの割合(当該課徴金に係る納付命令について審判請求がされたときは、当該審判請求に対する審決書の謄本の送達の日までは年七・二五パーセントを超えない範囲内において政令で定める割合)で計算した延滞金を徴収することができる。ただし、延滞金の額が千円未満であるときは、この限りでない。
○4 前項の規定により計算した延滞金の額に百円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
○5 公正取引委員会は、第一項又は第二項の規定による督促を受けた者がその指定する期限までにその納付すべき金額を納付しないときは、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。
○6 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとし、その時効については、国税の例による。

第七十条の十 公正取引委員会は、第六十六条第三項の規定により納付命令の全部又は一部を取り消した場合において、取消し前の納付命令に基づき既に納付された金額で、還付すべきものがあるときは、遅滞なく、金銭で還付しなければならない。
○2 公正取引委員会は、前項の金額を還付する場合には、当該金額の納付があつた日の翌日からその還付のための支払決定をした日までの期間の日数に応じ、その金額に年七・二五パーセントを超えない範囲内において政令で定める割合を乗じて計算した金額をその還付すべき金額に加算しなければならない。
○3 前条第三項ただし書及び第四項の規定は、前項の規定により加算する金額について準用する。

第七十条の十一 公正取引委員会は、第十一条第一項又は第二項の認可の申請があつた場合において、当該申請を理由がないと認めるときは、審決でこれを却下しなければならない。
○2 第四十五条第二項の規定は、前項の認可の申請があつた場合に、これを準用する。

第七十条の十二 公正取引委員会は、第十一条第一項又は第二項の認可をした場合において、その認可の要件である事実が消滅し、又は変更したと認めるときは、審判手続を経て、審決でこれを取り消し、又は変更することができる。この場合において、公正取引委員会は、職権で審判手続を開始することができる。
○2 公正取引委員会は、経済事情の変化その他の事由により、排除措置命令又は第六十五条若しくは第六十七条第一項の規定による審決を維持することが不適当であると認めるときは、審決でこれを取り消し、又は変更することができる。ただし、被審人の利益を害することとなる場合は、この限りでない。

第七十条の十三 裁判所は、緊急の必要があると認めるときは、公正取引委員会の申立てにより、第三条、第六条、第八条第一項、第九条第一項若しくは第二項、第十条第一項、第十一条第一項、第十三条、第十四条、第十五条第一項、第十五条の二第一項、第十六条第一項、第十七条又は第十九条の規定に違反する疑いのある行為をしている者に対し、当該行為、議決権の行使若しくは会社の役員の業務の執行を一時停止すべきことを命じ、又はその命令を取り消し、若しくは変更することができる。
○2 第七十条の六第二項の規定は、前項の規定による裁判に、これを準用する。

第七十条の十四 前条第一項の規定による裁判については、裁判所の定める保証金又は有価証券を供託して、その執行を免かれることができる。
○2 第七十条の七の規定は、前項の規定による供託に係る保証金又は有価証券の没取にこれを準用する。

第七十条の十五 利害関係人は、公正取引委員会に対し、審判手続が開始された後、事件記録の閲覧若しくは謄写又は排除措置命令書、課徴金納付命令書、審判開始決定書若しくは審決書の謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。この場合において、公正取引委員会は、第三者の利益を害するおそれがあると認めるときその他正当な理由があるときでなければ、事件記録の閲覧又は謄写を拒むことができない。
○2 公正取引委員会は、前項の規定により謄写をさせる場合において、謄写した事件記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。

第七十条の十六 送達すべき書類は、この法律に規定するもののほか、公正取引委員会規則で定める。

第七十条の十七 書類の送達については、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第九十九条、第百一条、第百三条、第百五条、第百六条、第百八条及び第百九条の規定を準用する。この場合において、同法第九十九条第一項中「執行官」とあるのは「公正取引委員会の職員」と、同法第百八条中「裁判長」とあり、及び同法第百九条中「裁判所」とあるのは「公正取引委員会」と読み替えるものとする。

第七十条の十八 公正取引委員会は、次に掲げる場合には、公示送達をすることができる。
一 送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
二 外国においてすべき送達について、前条において読み替えて準用する民事訴訟法第百八条の規定によることができず、又はこれによつても送達をすることができないと認めるべき場合
三 前条において読み替えて準用する民事訴訟法第百八条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
○2 公示送達は、送達すべき書類を送達を受けるべき者にいつでも交付すべき旨を公正取引委員会の掲示場に掲示することにより行う。
○3 公示送達は、前項の規定による掲示を始めた日から二週間を経過することによつて、その効力を生ずる。
○4 外国においてすべき送達についてした公示送達にあつては、前項の期間は、六週間とする。

第七十条の十九 行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)第二条第七号に規定する処分通知等であつて、この法律又は公正取引委員会規則の規定により書類の送達により行うこととしているものについては、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律第四条第一項の規定にかかわらず、当該処分通知等の相手方が送達を受ける旨の公正取引委員会規則で定める方式による表示をしないときは、電子情報処理組織(同項に規定する電子情報処理組織をいう。以下この条において同じ。)を使用して行うことができない。
○2 公正取引委員会の職員が前項に規定する処分通知等に関する事務を電子情報処理組織を使用して行つたときは、第七十条の十七において読み替えて準用する民事訴訟法第百九条の規定による送達に関する事項を記載した書面の作成及び提出に代えて、当該事項を電子情報処理組織を使用して公正取引委員会の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。)に備えられたファイルに記録しなければならない。

第七十条の二十 この法律に定めるものを除くほか、公正取引委員会の調査及び審判に関する手続その他事件の処理並びに第七十条の六第一項及び第七十条の十四第一項の供託に関し必要な事項は、政令で定める。

第七十条の二十一 公正取引委員会がする排除措置命令、納付命令及び第七十条の十一第一項に規定する認可の申請に係る処分並びにこの節の規定による審決その他の処分(第四十七条第二項の規定によつて審査官がする処分及び第五十六条第一項の規定によつて審判官がする処分を含む。)については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章及び第三章の規定は、適用しない。

第七十条の二十二 公正取引委員会がした排除措置命令及び納付命令並びにこの節の規定による審決その他の処分(第四十七条第二項の規定によつて審査官がした処分及び第五十六条第一項の規定によつて審判官がした処分を含む。)については、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。

    第三節 雑則

第七十一条 公正取引委員会は、特定の事業分野における特定の取引方法を第二条第九項の規定により指定しようとするときは、当該特定の取引方法を用いる事業者と同種の事業を営む事業者の意見を聴き、かつ、公聴会を開いて一般の意見を求め、これらの意見を十分に考慮した上で、これをしなければならない。

第七十二条 第二条第九項の規定による指定は、告示によつてこれを行う。

第七十三条 公正取引委員会は、第五十三条第一項の規定により審判手続を開始しようとするときは、公聴会を開いて一般の意見を求めなければならない。

第七十四条 公正取引委員会は、第十二章に規定する手続による調査により犯則の心証を得たときは、検事総長に告発しなければならない。
○2 公正取引委員会は、前項に定めるもののほか、この法律の規定に違反する犯罪があると思料するときは、検事総長に告発しなければならない。
○3 前二項の規定による告発に係る事件について公訴を提起しない処分をしたときは、検事総長は、遅滞なく、法務大臣を経由して、その旨及びその理由を、文書をもつて内閣総理大臣に報告しなければならない。

第七十五条 第四十七条第一項第一号若しくは第二号若しくは第二項又は第五十六条第一項の規定により出頭又は鑑定を命ぜられた参考人又は鑑定人は、政令で定めるところにより、旅費及び手当を請求することができる。

第七十六条 公正取引委員会は、その内部規律、事件の処理手続及び届出、認可又は承認の申請その他の事項に関する必要な手続について規則を定めることができる。
○2 前項の規定により事件の処理手続について規則を定めるに当たつては、被審人が自己の主張を陳述し、及び立証するための機会が十分に確保されること等当該手続の適正の確保が図られるよう留意しなければならない。

   第九章 訴訟

第七十七条 公正取引委員会の審決の取消しの訴えは、審決がその効力を生じた日から三十日(第八条の四第一項の措置を命ずる審決については、三月)以内に提起しなければならない。
○2 前項の期間は、不変期間とする。
○3 審判請求をすることができる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ、提起することができない。

第七十八条 公正取引委員会の審決に係る行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第三条第一項に規定する抗告訴訟については、公正取引委員会を被告とする。

第七十九条 訴えの提起があつたときは、裁判所は、遅滞なく公正取引委員会に対し、当該事件の記録(事件関係人、参考人又は鑑定人の審尋調書及び審判調書その他裁判上証拠となるべき一切のものを含む。)の送付を求めなければならない。

第八十条 第七十七条第一項に規定する訴訟については、公正取引委員会の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときには、裁判所を拘束する。
○2 前項に規定する実質的な証拠の有無は、裁判所がこれを判断するものとする。

第八十一条 当事者は、裁判所に対し、当該事件に関係のある新しい証拠の申出をすることができる。ただし、公正取引委員会が認定した事実に関する証拠の申出は、次の各号の一に該当することを理由とするものであることを要する。
一 公正取引委員会が、正当な理由がなくて、当該証拠を採用しなかつた場合
二 公正取引委員会の審判に際して当該証拠を提出することができず、かつ、これを提出できなかつたことについて重大な過失がなかつた場合
○2 前項ただし書に規定する証拠の申出については、当事者において、同項各号の一に該当する事実を明らかにしなければならない。
○3 裁判所は、第一項ただし書に規定する証拠の申出に理由があり、当該証拠を取り調べる必要があると認めるときは、公正取引委員会に対し、当該事件を差し戻し、当該証拠を取り調べた上適当な措置をとるべきことを命じなければならない。

第八十二条 裁判所は、公正取引委員会の審決が、次の各号のいずれかに該当する場合には、これを取り消すことができる。
一 審決の基礎となつた事実を立証する実質的な証拠がない場合
二 審決が憲法その他の法令に違反する場合
○2 公正取引委員会は、審決(第六十六条の規定によるものに限る。)の取消しの判決が確定したときは、判決の趣旨に従い、改めて審判請求に対する審決をしなければならない。

第八十三条 裁判所は、公正取引委員会の審決(第六十七条及び第七十条の十二第一項の規定によるものに限る。)を取り消すべき場合において、さらに審判をさせる必要があると認めるときは、その理由を示して事件を公正取引委員会に差し戻すことができる。

第八十三条の二 第二十四条の規定による侵害の停止又は予防に関する訴えが提起されたときは、裁判所は、被告の申立てにより、決定で、相当の担保を立てるべきことを原告に命ずることができる。
○2 前項の申立てをするには、同項の訴えの提起が不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。)によるものであることを疎明しなければならない。

第八十三条の三 裁判所は、第二十四条の規定による侵害の停止又は予防に関する訴えが提起されたときは、その旨を公正取引委員会に通知するものとする。
○2 裁判所は、前項の訴えが提起されたときは、公正取引委員会に対し、当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項について、意見を求めることができる。
○3 公正取引委員会は、第一項の訴えが提起されたときは、裁判所の許可を得て、裁判所に対し、当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項について、意見を述べることができる。

第八十四条 第二十五条の規定による損害賠償に関する訴えが提起されたときは、裁判所は、公正取引委員会に対し、同条に規定する違反行為によつて生じた損害の額について、意見を求めることができる。
○2 前項の規定は、第二十五条の規定による損害賠償の請求が、相殺のために裁判上主張された場合に、これを準用する。

第八十四条の二 第二十四条の規定による侵害の停止又は予防に関する訴えについて、民事訴訟法第四条及び第五条の規定により次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有する場合には、それぞれ当該各号に定める裁判所にも、その訴えを提起することができる。
一 東京高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(東京地方裁判所を除く。)、大阪地方裁判所、名古屋地方裁判所、広島地方裁判所、福岡地方裁判所、仙台地方裁判所、札幌地方裁判所又は高松地方裁判所 東京地方裁判所
二 大阪高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(大阪地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は大阪地方裁判所
三 名古屋高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(名古屋地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は名古屋地方裁判所
四 広島高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(広島地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は広島地方裁判所
五 福岡高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(福岡地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は福岡地方裁判所
六 仙台高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(仙台地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は仙台地方裁判所
七 札幌高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(札幌地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は札幌地方裁判所
八 高松高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(高松地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は高松地方裁判所
○2 一の訴えで第二十四条の規定による請求を含む数個の請求をする場合における民事訴訟法第七条の規定の適用については、同条中「第四条から前条まで(第六条第三項を除く。)」とあるのは、「第四条から前条まで(第六条第三項を除く。)及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第八十四条の二第一項」とする。

第八十四条の三 第八十九条から第九十一条までの罪に係る訴訟の第一審の裁判権は、地方裁判所に属する。

第八十四条の四 前条に規定する罪に係る事件について、刑事訴訟法第二条の規定により第八十四条の二第一項各号に掲げる裁判所が管轄権を有する場合には、それぞれ当該各号に定める裁判所も、その事件を管轄することができる。

第八十五条 次の各号のいずれかに該当する訴訟については、第一審の裁判権は、東京高等裁判所に属する。
一 公正取引委員会の審決に係る行政事件訴訟法第三条第一項に規定する抗告訴訟(同条第五項から第七項までに規定する訴訟を除く。)
二 第二十五条の規定による損害賠償に係る訴訟

第八十六条 第七十条の六第一項、第七十条の七第一項(第七十条の十四第二項において準用する場合を含む。)、第七十条の十三第一項、第九十七条及び第九十八条に規定する事件は、東京高等裁判所の専属管轄とする。

第八十七条 東京高等裁判所に、第八十五条に掲げる訴訟事件及び前条に掲げる事件のみを取り扱う裁判官の合議体を設ける。
○2 前項の合議体の裁判官の員数は、これを五人とする。

第八十七条の二 裁判所は、第二十四条の規定による侵害の停止又は予防に関する訴えが提起された場合において、他の裁判所に同一又は同種の行為に係る同条の規定による訴訟が係属しているときは、当事者の住所又は所在地、尋問を受けるべき証人の住所、争点又は証拠の共通性その他の事情を考慮して、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部について、当該他の裁判所又は当該訴えにつき第八十四条の二第一項の規定により管轄権を有する他の裁判所に移送することができる。

第八十八条 公正取引委員会の審決に係る行政事件訴訟法第三条第一項に規定する抗告訴訟については、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(昭和二十二年法律第百九十四号)第六条の規定は、適用しない。

   第十章 雑則

第八十八条の二 この法律に基づき、政令又は公正取引委員会規則を制定し、又は改廃する場合においては、その政令又は公正取引委員会規則で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

   第十一章 罰則

第八十九条 次の各号のいずれかに該当するものは、三年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
一 第三条の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をした者
二 第八条第一号の規定に違反して一定の取引分野における競争を実質的に制限したもの
○2 前項の未遂罪は、罰する。

第九十条 次の各号のいずれかに該当するものは、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第六条又は第八条第二号の規定に違反して不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定又は国際的契約をしたもの
二 第八条第三号又は第四号の規定に違反したもの
三 排除措置命令又は第六十五条若しくは第六十七条第一項の審決が確定した後においてこれに従わないもの

第九十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
一 第十条第一項前段の規定に違反して株式を取得し、又は所有した者
二 第十一条第一項の規定に違反して株式を取得し、若しくは所有し、又は同条第二項の規定に違反して株式を所有した者
三 第十三条第一項の規定に違反して役員の地位を兼ねた者
四 第十四条前段の規定に違反して株式を取得し、又は所有した者
五 前各号に掲げる規定による禁止又は制限につき第十七条の規定に違反した者

第九十一条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、二百万円以下の罰金に処する。
一 削除(便宜的な未施行レコード)
二 第九条第五項の規定に違反して報告書を提出せず、又は虚偽の記載をした報告書を提出した者
三 第九条第六項の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の記載をした届出書を提出した者
四 第十条第二項(同条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して報告書を提出せず、又は虚偽の記載をした報告書を提出した者
五 第十五条第二項(同条第四項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の記載をした届出書を提出した者
六 第十五条第五項の規定に違反して合併による設立又は変更の登記をした者
七 第十五条の二第二項及び第三項(これらの規定を同条第六項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の記載をした届出書を提出した者
八 第十五条の二第七項において読み替えて準用する第十五条第五項の規定に違反して共同新設分割による設立の登記又は吸収分割による変更の登記をした者
九 第十六条第二項(同条第五項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の記載をした届出書を提出した者
十 第十六条第六項において読み替えて準用する第十五条第五項の規定に違反して第十六条第一項第一号又は第二号に該当する行為をした者
十一 第二十三条第六項の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の記載をした届出書を提出した者

第九十二条 第八十九条から第九十一条までの罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。

第九十二条の二 第六十二条において読み替えて準用する刑事訴訟法第百五十四条又は第百六十六条の規定により宣誓した参考人又は鑑定人が虚偽の陳述又は鑑定をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
○2 前項の罪を犯した者が、審判手続終了前であつて、かつ、犯罪の発覚する前に自白したときは、その刑を減軽又は免除することができる。

第九十三条 第三十九条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第九十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第四十七条第一項第一号若しくは第二項又は第五十六条第一項の規定による事件関係人又は参考人に対する処分に違反して出頭せず、陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、又は報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者
二 第四十七条第一項第二号若しくは第二項又は第五十六条第一項の規定による鑑定人に対する処分に違反して出頭せず、鑑定をせず、又は虚偽の鑑定をした者
三 第四十七条第一項第三号若しくは第二項又は第五十六条第一項の規定による物件の所持者に対する処分に違反して物件を提出しない者
四 第四十七条第一項第四号若しくは第二項又は第五十六条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第九十四条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
一 第四十条の規定による処分に違反して出頭せず、報告、情報若しくは資料を提出せず、又は虚偽の報告、情報若しくは資料を提出した者
二 第六十二条において読み替えて準用する刑事訴訟法第百五十四条又は第百六十六条の規定による参考人又は鑑定人に対する命令に違反して宣誓をしない者

第九十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。
一 第八十九条 五億円以下の罰金刑
二 第九十条第三号(第七条第一項又は第八条の二第一項若しくは第三項の規定による命令(第三条又は第八条第一号の規定に違反する行為の差止めを命ずる部分に限る。)に違反した場合を除く。) 三億円以下の罰金刑
三 第九十条第一号、第二号若しくは第三号(第七条第一項又は第八条の二第一項若しくは第三項の規定による命令(第三条又は第八条第一号の規定に違反する行為の差止めを命ずる部分に限る。)に違反した場合に限る。)、第九十一条(第三号を除く。)、第九十一条の二又は第九十四条 各本条の罰金刑
○2 法人でない団体の代表者、管理人、代理人、使用人その他の従業者がその団体の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その団体に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。
一 第八十九条 五億円以下の罰金刑
二 第九十条第三号(第七条第一項又は第八条の二第一項若しくは第三項の規定による命令(第三条又は第八条第一号の規定に違反する行為の差止めを命ずる部分に限る。)に違反した場合を除く。) 三億円以下の罰金刑
三 第九十条第一号、第二号若しくは第三号(第七条第一項又は第八条の二第一項若しくは第三項の規定による命令(第三条又は第八条第一号の規定に違反する行為の差止めを命ずる部分に限る。)に違反した場合に限る。)、第九十一条第四号若しくは第五号(第四号に係る部分に限る。)、又は第九十四条 各本条の罰金刑
○3 前項の場合においては、代表者又は管理人が、その訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の訴訟行為に関する刑事訴訟法の規定を準用する。

第九十五条の二 第八十九条第一項第一号、第九十条第一号若しくは第三号又は第九十一条(第三号を除く。)の違反があつた場合においては、その違反の計画を知り、その防止に必要な措置を講ぜず、又はその違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた当該法人(第九十条第一号又は第三号の違反があつた場合における当該法人で事業者団体に該当するものを除く。)の代表者に対しても、各本条の罰金刑を科する。

第九十五条の三 第八十九条第一項第二号又は第九十条の違反があつた場合においては、その違反の計画を知り、その防止に必要な措置を講ぜず、又はその違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた当該事業者団体の理事その他の役員若しくは管理人又はその構成事業者(事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者が構成事業者である場合には、当該事業者を含む。)に対しても、それぞれ各本条の罰金刑を科する。
○2 前項の規定は、同項に掲げる事業者団体の理事その他の役員若しくは管理人又はその構成事業者が法人その他の団体である場合においては、当該団体の理事その他の役員又は管理人に、これを適用する。

第九十五条の四 裁判所は、十分な理由があると認めるときは、第八十九条第一項第二号又は第九十条に規定する刑の言渡しと同時に、事業者団体の解散を宣告することができる。
○2 前項の規定により解散が宣告された場合には、他の法令の規定又は定款その他の定めにかかわらず、事業者団体は、その宣告により解散する。

第九十六条 第八十九条から第九十一条までの罪は、公正取引委員会の告発を待つて、これを論ずる。
○2 前項の告発は、文書をもつてこれを行う。
○3 公正取引委員会は、第一項の告発をするに当たり、その告発に係る犯罪について、前条第一項又は第百条第一項第一号の宣告をすることを相当と認めるときは、その旨を前項の文書に記載することができる。
○4 第一項の告発は、公訴の提起があつた後は、これを取り消すことができない。

第九十七条 排除措置命令に違反したものは、五十万円以下の過料に処する。ただし、その行為につき刑を科するべきときは、この限りでない。

第九十八条 第七十条の十三第一項の規定による裁判に違反したものは、三十万円以下の過料に処する。

第九十九条 削除

第百条 第八十九条又は第九十条の場合において、裁判所は、情状により、刑の言渡しと同時に、次に掲げる宣告をすることができる。ただし、第一号の宣告をするのは、その特許権又は特許発明の専用実施権若しくは通常実施権が、犯人に属している場合に限る。
一 違反行為に供せられた特許権の特許又は特許発明の専用実施権若しくは通常実施権は取り消されるべき旨
二 判決確定後六月以上三年以下の期間、政府との間に契約をすることができない旨
○2 前項第一号の宣告をした判決が確定したときは、裁判所は、判決の謄本を特許庁長官に送付しなければならない。
○3 前項の規定による判決の謄本の送付があつたときは、特許庁長官は、その特許権の特許又は特許発明の専用実施権若しくは通常実施権を取り消さなければならない。

   第十二章 犯則事件の調査等

第百一条 公正取引委員会の職員(公正取引委員会の指定を受けた者に限る。以下この章において「委員会職員」という。)は、犯則事件(第八十九条から第九十一条までの罪に係る事件をいう。以下この章において同じ。)を調査するため必要があるときは、犯則嫌疑者若しくは参考人(以下この項において「犯則嫌疑者等」という。)に対して出頭を求め、犯則嫌疑者等に対して質問し、犯則嫌疑者等が所持し若しくは置き去つた物件を検査し、又は犯則嫌疑者等が任意に提出し若しくは置き去つた物件を領置することができる。
○2 委員会職員は、犯則事件の調査について、官公署又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

第百二条 委員会職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、公正取引委員会の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、臨検、捜索又は差押えをすることができる。
○2 前項の場合において急速を要するときは、委員会職員は、臨検すべき場所、捜索すべき場所、身体若しくは物件又は差し押さえるべき物件の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、同項の処分をすることができる。
○3 委員会職員は、第一項又は前項の許可状(以下この章において「許可状」という。)を請求する場合においては、犯則事件が存在すると認められる資料を提供しなければならない。
○4 前項の請求があつた場合においては、地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官は、臨検すべき場所、捜索すべき場所、身体若しくは物件又は差し押さえるべき物件並びに請求者の官職及び氏名、有効期間、その期間経過後は執行に着手することができずこれを返還しなければならない旨、交付の年月日並びに裁判所名を記載し、自己の記名押印した許可状を委員会職員に交付しなければならない。この場合において、犯則嫌疑者の氏名又は犯則の事実が明らかであるときは、これらの事項をも記載しなければならない。
○5 委員会職員は、許可状を他の委員会職員に交付して、臨検、捜索又は差押えをさせることができる。

第百三条 委員会職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、許可状の交付を受けて、犯則嫌疑者から発し、又は犯則嫌疑者に対して発した郵便物、信書便物又は電信についての書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するものを差し押さえることができる。
○2 委員会職員は、前項の規定に該当しない郵便物、信書便物又は電信についての書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するものについては、犯則事件に関係があると認めるに足りる状況があるものに限り、許可状の交付を受けて、これを差し押さえることができる。
○3 委員会職員は、前二項の規定による処分をした場合においては、その旨を発信人又は受信人に通知しなければならない。ただし、通知によつて犯則事件の調査が妨げられるおそれがある場合は、この限りでない。

第百四条 臨検、捜索又は差押えは、許可状に夜間でも執行することができる旨の記載がなければ、日没から日の出までの間には、してはならない。
○2 日没前に開始した臨検、捜索又は差押えは、必要があると認めるときは、日没後まで継続することができる。

第百五条 臨検、捜索又は差押えの許可状は、これらの処分を受ける者に提示しなければならない。

第百六条 委員会職員は、この章の規定により質問、検査、領置、臨検、捜索又は差押えをするときは、その身分を示す証票を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

第百七条 委員会職員は、臨検、捜索又は差押えをするため必要があるときは、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。
○2 前項の処分は、領置物件又は差押物件についても、することができる。

第百八条 委員会職員は、この章の規定により質問、検査、領置、臨検、捜索又は差押えをする間は、何人に対しても、許可を受けないでその場所に出入りすることを禁止することができる。

第百九条 委員会職員は、人の住居又は人の看守する邸宅若しくは建造物その他の場所で臨検、捜索又は差押えをするときは、その所有者若しくは管理者(これらの者の代表者、代理人その他これらの者に代わるべき者を含む。)又はこれらの者の使用人若しくは同居の親族で成年に達した者を立ち会わせなければならない。
○2 前項の場合において、同項に規定する者を立ち会わせることができないときは、その隣人で成年に達した者又はその地の警察官若しくは地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。
○3 女子の身体について捜索するときは、成年の女子を立ち会わせなければならない。ただし、急速を要する場合は、この限りでない。

第百十条 委員会職員は、臨検、捜索又は差押えをするに際し必要があるときは、警察官の援助を求めることができる。

第百十一条 委員会職員は、この章の規定により質問、検査、領置、臨検、捜索又は差押えをしたときは、その処分を行つた年月日及びその結果を記載した調書を作成し、質問を受けた者又は立会人に示し、これらの者とともにこれに署名押印しなければならない。ただし、質問を受けた者又は立会人が署名押印せず、又は署名押印することができないときは、その旨を付記すれば足りる。

第百十二条 委員会職員は、領置又は差押えをしたときは、その目録を作成し、領置物件若しくは差押物件の所有者若しくは所持者又はこれらの者に代わるべき者にその謄本を交付しなければならない。

第百十三条 運搬又は保管に不便な領置物件又は差押物件は、その所有者又は所持者その他委員会職員が適当と認める者に、その承諾を得て、保管証を徴して保管させることができる。

第百十四条 公正取引委員会は、領置物件又は差押物件について留置の必要がなくなつたときは、その返還を受けるべき者にこれを還付しなければならない。
○2 公正取引委員会は、前項の領置物件又は差押物件の返還を受けるべき者の住所若しくは居所がわからないため、又はその他の事由によりこれを還付することができない場合においては、その旨を公告しなければならない。
○3 前項の公告に係る領置物件又は差押物件について、公告の日から六月を経過しても還付の請求がないときは、これらの物件は、国庫に帰属する。

第百十五条 委員会職員は、犯則事件の調査を終えたときは、調査の結果を公正取引委員会に報告しなければならない。

第百十六条 公正取引委員会は、犯則事件の調査の結果、第七十四条第一項の規定により告発した場合において、領置物件又は差押物件があるときは、これを領置目録又は差押目録とともに引き継がなければならない。
○2 前項の領置物件又は差押物件が第百十三条の規定による保管に係るものである場合においては、同条の保管証をもつて引き継ぐとともに、その旨を同条の保管者に通知しなければならない。
○3 前二項の規定により領置物件又は差押物件が引き継がれたときは、当該物件は、刑事訴訟法の規定によつて押収されたものとみなす。

第百十七条 この章の規定に基づいて公正取引委員会又は委員会職員がする処分及び行政指導については、行政手続法第二章から第四章までの規定は、適用しない。

第百十八条 この章の規定に基づいて公正取引委員会又は委員会職員がした処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。

〔附則・改正附則は略〕

  SHIRAISHI Tadashi