平成17年改正前の独禁法典
(厳密には、平成17年4月1日現在で施行されていたもの)
(独禁法典には見出しがないので白石が独自に作成)
◎昭和二十二年法律第五十四号
(件名:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律目次
第一章 総則
第二章 私的独占及び不当な取引制限
第三章 事業者団体
第三章の二 独占的状態
第四章 株式の保有、役員の兼任、合併、分割及び営業の譲受け
第四章の二 価格の同調的引上げ
第五章 不公正な取引方法
第六章 適用除外
第七章 差止請求及び損害賠償
第八章 公正取引委員会
第一節 設置、任務及び所掌事務並びに組織等
第二節 手続
第三節 雑則
第九章 訴訟
第九章の二 雑則
第十章 罰則
附則 〔略〕
第一章 総則
【目的】
第一条 この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。
【定義】
第二条 この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。
○2 この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。
一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団
二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団
三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体
○3 この法律において「役員」とは、理事、取締役、執行役、業務を執行する無限責任社員、監事若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の営業の主任者をいう。
○4 この法律において「競争」とは、二以上の事業者がその通常の事業活動の範囲内において、かつ、当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく次に掲げる行為をし、又はすることができる状態をいう。
一 同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること
二 同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること
○5 この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
○6 この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
○7 この法律において「独占的状態」とは、同種の商品(当該同種の商品に係る通常の事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく供給することができる商品を含む。)(以下この項において「一定の商品」という。)並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)の価額(当該商品に直接課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)又は国内において供給された同種の役務の価額(当該役務の提供を受ける者に当該役務に関して課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)の政令で定める最近の一年間における合計額が千億円を超える場合における当該一定の商品又は役務に係る一定の事業分野において、次に掲げる市場構造及び市場における弊害があることをいう。
一 当該一年間において、一の事業者の市場占拠率(当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)又は国内において供給された当該役務の数量(数量によることが適当でない場合にあつては、これらの価額とする。以下この号において同じ。)のうち当該事業者が供給した当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品又は役務の数量の占める割合をいう。以下この号において同じ。)が二分の一を超え、又は二の事業者のそれぞれの市場占拠率の合計が四分の三を超えていること。
二 他の事業者が当該事業分野に属する事業を新たに営むことを著しく困難にする事情があること。
三 当該事業者の供給する当該一定の商品又は役務につき、相当の期間、需給の変動及びその供給に要する費用の変動に照らして、価格の上昇が著しく、又はその低下がきん少であり、かつ、当該事業者がその期間次のいずれかに該当していること。
イ 当該事業者の属する政令で定める業種における標準的な政令で定める種類の利益率を著しく超える率の利益を得ていること。
ロ 当該事業者の属する事業分野における事業者の標準的な販売費及び一般管理費に比し著しく過大と認められる販売費及び一般管理費を支出していること。
○8 経済事情が変化して国内における生産業者の出荷の状況及び卸売物価に著しい変動が生じたときは、これらの事情を考慮して、前項の金額につき政令で別段の定めをするものとする。
○9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいう。
一 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
二 不当な対価をもつて取引すること。
三 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。
四 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
五 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
六 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、若しくは強制すること。
○10 この法律において「子会社」とは、会社がその総株主(総社員を含む。以下同じ。)の議決権(商法 (明治三十二年法律第四十八号)第二百十一条ノ二第四項 に規定する種類の株式又は持分に係る議決権を除き、同条第五項 の規定により議決権を有するものとみなされる株式又は持分に係る議決権を含む。第四章において同じ。)の過半数を有する他の国内の会社をいう。
第二章 私的独占及び不当な取引制限
【私的独占又は不当な取引制限の禁止】
第三条 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。
第四条 削除
第五条 削除
【国際的協定等の規制】
第六条 事業者は、不当な取引制限又は不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的協定又は国際的契約をしてはならない。
【排除措置命令】
第七条 第三条又は前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止め、営業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
○2 公正取引委員会は、第三条又は前条の規定に違反する行為が既になくなつている場合においても、特に必要があると認めるときは、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為が既になくなつている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる。ただし、当該行為がなくなつた日から当該行為につき勧告又は審判手続が開始されることなく一年を経過したときは、この限りでない。
【課徴金納付の命令】
第七条の二 事業者が、不当な取引制限又は不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定若しくは国際的契約で、商品若しくは役務の対価に係るもの又は実質的に商品若しくは役務の供給量を制限することによりその対価に影響があるものをしたときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」という。)における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の六(小売業については百分の二、卸売業については百分の一とする。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、その額が五十万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
○2 前項の場合において、当該事業者が次のいずれかに該当するときは、同項中「百分の六」とあるのは「百分の三」と、「百分の二」とあるのは「百分の一」とする。
一 資本の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第二号の三までに掲げる業種及び第三号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、卸売業(第三号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二の二 資本の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、サービス業(第三号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二の三 資本の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であつて、小売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であつて、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの
○3 第一項の規定による命令を受けたものは、前二項に定める課徴金を納付しなければならない。
○4 第一項又は第二項の規定により計算した課徴金の額に一万円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
○5 第一項に規定する違反行為をした事業者が会社である場合において、当該会社が合併により消滅したときは、当該会社がした違反行為は、合併後存続し、又は合併により設立された会社がした違反行為とみなして、前各項の規定を適用する。
○6 実行期間の終了した日から三年を経過したとき(当該違反行為についての審判手続が開始された場合にあつては、当該審判手続が終了した日から一年を経過したとき(当該一年の経過が当該実行期間の終了した日から三年を経過する日前に到来したときは、当該三年を経過したとき))は、公正取引委員会は、当該違反行為に係る課徴金の納付を命ずることができない。ただし、当該違反行為について、第四十八条の二第一項の規定により課徴金を国庫に納付することを命じた後においては、この限りでない。
第三章 事業者団体
【事業者団体規制】
第八条 事業者団体は、次の各号の一に該当する行為をしてはならない。
一 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。
二 第六条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること。
三 一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。
四 構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)の機能又は活動を不当に制限すること。
五 事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。
○2 事業者団体は、公正取引委員会規則の定めるところにより、その成立の日から三十日以内に、その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。ただし、次に掲げる事業者団体は、届け出ることを要しない。
一 特別の法律の規定に基づき設立された事業者団体のうち、次のいずれかに該当するものとして政令で定めるもの
イ 当該法律で定められた目的、事業又は業務等に照らして、前項各号の一に該当する行為を行うおそれがない事業者団体
ロ 小規模の事業者若しくは消費者の相互扶助を目的として設立された事業者団体又はその健全な発達を目的として設立された事業者団体
二 小規模の事業者の相互扶助を目的として設立された事業者団体であつて、前項各号の一に該当する行為を行うおそれが少ないものとして政令で定めるもの(前号に掲げるものを除く。)
三 手形法 (昭和七年法律第二十号)及び小切手法 (昭和八年法律第五十七号)の規定により指定されている手形交換所
○3 事業者団体(前項各号に掲げるものを除く。次項において同じ。)は、前項の規定による届出に係る事項に変更を生じたときは、公正取引委員会規則の定めるところにより、その変更の日の属する事業年度終了の日から二箇月以内に、その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。
○4 事業者団体が解散したときは、公正取引委員会規則の定めるところにより、その解散の日から三十日以内に、その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。
【排除措置命令】
第八条の二 前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者団体に対し、届出を命じ、又は当該行為の差止、当該団体の解散その他当該行為の排除に必要な措置を命ずることができる。
○2 第七条第二項の規定は、前条第一項の規定に違反する行為に準用する。
○3 公正取引委員会は、事業者団体に対し、第一項又は前項において準用する第七条第二項に掲げる措置を命ずる場合において、特に必要があると認めるときは、第八章第二節に規定する手続に従い、当該団体の役員若しくは管理人又はその構成事業者(構成事業者が他の事業者の利益のためにする行為を行うものである場合には、その事業者を含む。第四十八条第一項及び第二項において同じ。)に対しても、第一項又は前項において準用する第七条第二項の措置を確保するために必要な措置を命ずることができる。
【課徴金納付の命令】
第八条の三 第七条の二の規定は、第八条第一項第一号又は第二号(不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定又は国際的契約をする場合に限る。)の規定に違反する行為が行われた場合に準用する。この場合において、第七条の二第一項中「事業者が」とあるのは「事業者団体が」と、「事業者に対し」とあるのは「事業者団体の構成事業者(構成事業者が他の事業者の利益のためにする行為を行うものである場合には、その事業者。以下この条において同じ。)に対し」と、同条第二項中「当該事業者が」とあるのは「当該事業者団体の構成事業者が」と読み替えるものとする。
第三章の二 独占的状態
【独占的状態規制】
第八条の四 独占的状態があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、営業の一部の譲渡その他当該商品又は役務について競争を回復させるために必要な措置を命ずることができる。ただし、当該措置により、当該事業者につき、その供給する商品若しくは役務の供給に要する費用の著しい上昇をもたらす程度に事業の規模が縮小し、経理が不健全になり、又は国際競争力の維持が困難になると認められる場合及び当該商品又は役務について競争を回復するに足りると認められる他の措置が講ぜられる場合は、この限りでない。
○2 公正取引委員会は、前項の措置を命ずるに当たつては、次の各号に掲げる事項に基づき、当該事業者及び関連事業者の事業活動の円滑な遂行並びに当該事業者に雇用されている者の生活の安定について配慮しなければならない。
一 資産及び収支その他の経理の状況
二 役員及び従業員の状況
三 工場、事業場及び事務所の位置その他の立地条件
四 事業設備の状況
五 特許権、商標権その他の無体財産権の内容及び技術上の特質
六 生産、販売等の能力及び状況
七 資金、原材料等の取得の能力及び状況
八 商品又は役務の供給及び流通の状況
第四章 株式の保有、役員の兼任、合併、分割及び営業の譲受け
【事業支配力過度集中の規制】
第九条 他の国内の会社の株式(社員の持分を含む。以下同じ。)を所有することにより事業支配力が過度に集中することとなる会社は、これを設立してはならない。
○2 会社(外国会社を含む。以下同じ。)は、他の国内の会社の株式を取得し、又は所有することにより国内において事業支配力が過度に集中することとなる会社となつてはならない。
○3 前二項において「事業支配力が過度に集中すること」とは、会社及び子会社その他当該会社が株式の所有により事業活動を支配している他の国内の会社の総合的事業規模が相当数の事業分野にわたつて著しく大きいこと、これらの会社の資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きいこと又はこれらの会社が相互に関連性のある相当数の事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めていることにより、国民経済に大きな影響を及ぼし、公正かつ自由な競争の促進の妨げとなることをいう。
○4 会社及びその一若しくは二以上の子会社又は会社の一若しくは二以上の子会社が総株主の議決権の過半数を有する他の国内の会社は、当該会社の子会社とみなして、この条の規定を適用する。
○5 次に掲げる会社は、当該会社及びその子会社の総資産の額(公正取引委員会規則で定める方法による資産の合計金額をいう。以下この項において同じ。)で国内の会社に係るものを公正取引委員会規則で定める方法により合計した額が、それぞれ当該各号に掲げる金額を下回らない範囲内において政令で定める金額を超える場合には、毎事業年度終了の日から三月以内に、公正取引委員会規則で定めるところにより、当該会社及びその子会社の事業に関する報告書を公正取引委員会に提出しなければならない。ただし、当該会社が他の会社の子会社である場合は、この限りでない。
一 子会社の株式の取得価額(最終の貸借対照表において別に付した価額があるときは、その価額)の合計額の当該会社の総資産の額に対する割合が百分の五十を超える会社(次号において「持株会社」という。) 六千億円
二 銀行業、保険業又は証券業を営む会社(持株会社及び証券仲介業者(証券取引法 (昭和二十三年法律第二十五号)第二条第十二項 に規定する証券仲介業者をいう。次条第二項において同じ。)を除く。) 八兆円
三 前二号に掲げる会社以外の会社 二兆円
○6 新たに設立された会社は、当該会社がその設立時において前項に規定する場合に該当するときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、その設立の日から三十日以内に、その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。
【会社による株式保有の規制】
第十条 会社は、他の会社の株式を取得し、又は所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不公正な取引方法により他の会社の株式を取得し、又は所有してはならない。
○2 会社であつて、その総資産の額(最終の貸借対照表による資産の合計金額をいう。以下同じ。)が二十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、当該会社並びに当該会社の子会社及び当該会社の総株主の議決権の過半数を有する国内の会社の総資産の額を合計した額(以下「総資産合計額」という。)が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるもの(以下この条において「株式所有会社」という。)は、他の国内の会社であつてその総資産の額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるもの(以下この項において「株式発行会社」という。)の株式を取得し、又は所有する場合(金銭又は有価証券の信託に係る株式について、自己が、委託者若しくは受益者となり議決権を行使することができる場合又は議決権の行使について受託者に指図を行うことができる場合を含む。)において、株式発行会社の総株主の議決権に占める株式所有会社の当該取得し、又は所有する株式に係る議決権の割合が、百分の十を下回らない範囲内において政令で定める数値(複数の数値を定めた場合にあつては、政令で定めるところにより、それぞれの数値)を超えることとなるときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、その超えることとなつた日から三十日以内に、当該株式に関する報告書を公正取引委員会に提出しなければならない。ただし、株式発行会社の発行済の株式の全部をその設立と同時に取得する場合、銀行業又は保険業を営む会社が他の国内の会社(銀行業又は保険業を営む会社その他公正取引委員会規則で定める会社を除く。次条第一項及び第二項において同じ。)の株式を取得し、又は所有する場合及び証券業を営む会社(証券仲介業者を除く。)が業務として株式を取得し、又は所有する場合は、この限りでない。
○3 前項の規定は、株式所有会社が、他の外国会社であつてその国内の営業所(当該外国会社の子会社の営業所を含む。)の最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高(以下「国内売上高」という。)が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるものの株式を取得し、又は所有する場合に準用する。
【銀行又は保険会社による議決権保有の規制】
第十一条 銀行業又は保険業を営む会社は、他の国内の会社の議決権をその総株主の議決権の百分の五(保険業を営む会社にあつては、百分の十。次項において同じ。)を超えて有することとなる場合には、その議決権を取得し、又は保有してはならない。ただし、公正取引委員会規則で定めるところによりあらかじめ公正取引委員会の認可を受けた場合及び次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 担保権の行使又は代物弁済の受領により株式を取得し、又は所有することにより議決権を取得し、又は保有する場合
二 他の国内の会社が自己の株式の取得を行つたことにより、その総株主の議決権に占める所有する株式に係る議決権の割合が増加した場合
三 金銭又は有価証券の信託に係る信託財産として株式を取得し、又は所有することにより議決権を取得し、又は保有する場合
四 投資事業有限責任組合の有限責任組合員(以下この号において「有限責任組合員」という。)となり、組合財産として株式を取得し、又は所有することにより議決権を取得し、又は保有する場合。ただし、有限責任組合員が議決権を行使することができる場合、議決権の行使について有限責任組合員が投資事業有限責任組合の無限責任組合員に指図を行うことができる場合及び当該議決権を有することとなつた日から政令で定める期間を超えて当該議決権を保有する場合を除く。
五 民法 (明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項 に規定する組合契約で会社に対する投資事業を営むことを約するものによつて成立する組合(一人又は数人の組合員にその業務の執行を委任しているものに限る。)の組合員(業務の執行を委任された者を除く。以下この号において「非業務執行組合員」という。)となり、組合財産として株式を取得し、又は所有することにより議決権を取得し、又は保有する場合。ただし、非業務執行組合員が議決権を行使することができる場合、議決権の行使について非業務執行組合員が業務の執行を委任された者に指図を行うことができる場合及び当該議決権を有することとなつた日から前号の政令で定める期間を超えて当該議決権を保有する場合を除く。
六 前各号に掲げる場合のほか、他の国内の会社の事業活動を拘束するおそれがない場合として公正取引委員会規則で定める場合
○2 前項第一号から第三号まで及び第六号の場合(同項第三号の場合にあつては、委託者若しくは受益者が議決権を行使することができる場合及び議決権の行使について委託者若しくは受益者が受託者に指図を行うことができる場合を除く。)において、他の国内の会社の議決権をその総株主の議決権の百分の五を超えて有することとなつた日から一年を超えて当該議決権を保有しようとするときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ公正取引委員会の認可を受けなければならない。この場合における公正取引委員会の認可は、同項第三号の場合を除き、銀行業又は保険業を営む会社が当該議決権を速やかに処分することを条件としなければならない。
○3 公正取引委員会は、前二項の認可をしようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣に協議しなければならない。
○4 前項の内閣総理大臣の権限は、金融庁長官に委任する。
第十二条 削除
【役員兼任の規制】
第十三条 会社の役員又は従業員(継続して会社の業務に従事する者であつて、役員以外の者をいう。以下この条において同じ。)は、他の会社の役員の地位を兼ねることにより一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該役員の地位を兼ねてはならない。
○2 会社は、不公正な取引方法により、自己と国内において競争関係にある他の会社に対し、自己の役員がその会社の役員若しくは従業員の地位を兼ね、又は自己の従業員がその会社の役員の地位を兼ねることを認めるべきことを強制してはならない。
【会社以外の者による株式保有の規制】
第十四条 会社以外の者は、会社の株式を取得し、又は所有することにより一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不公正な取引方法により会社の株式を取得し、又は所有してはならない。
【合併の規制】
第十五条 会社は、次の各号の一に該当する場合には、合併をしてはならない。
一 当該合併によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合
二 当該合併が不公正な取引方法によるものである場合
○2 国内の会社は、合併をしようとする場合において、当該合併をしようとする会社(以下この条において「合併会社」という。)のうち、いずれか一の会社に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、他のいずれか一の会社に係る総資産合計額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ当該合併に関する計画を公正取引委員会に届け出なければならない。ただし、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
一 合併会社のうち、いずれか一の会社が他のすべての会社のそれぞれの総株主の議決権の過半数を有している場合
二 合併会社のそれぞれの総株主の議決権の過半数を有する会社が同一の会社である場合
○3 前項の規定は、外国会社が合併をしようとする場合に準用する。この場合において、同項中「総資産合計額」とあるのは、「国内売上高」と読み替えるものとする。
○4 第二項(前項において準用する場合を含む。)の規定による届出を行つた会社は、届出受理の日から三十日を経過するまでは、合併をしてはならない。ただし、公正取引委員会は、その必要があると認める場合には、当該期間を短縮することができる。
○5 公正取引委員会は、第十七条の二の規定により当該合併に関し必要な措置を命ずるために、審判開始決定をし、又は勧告する場合には、前項本文に規定する三十日の期間又は同項ただし書の規定により短縮された期間(公正取引委員会が合併会社のうち少なくとも一の会社に対してそれぞれの期間内に公正取引委員会規則で定めるところにより必要な報告、情報又は資料の提出(以下この項において「報告等」という。)を求めた場合においては、前項の届出受理の日から百二十日を経過した日とすべての報告等を受理した日から九十日を経過した日とのいずれか遅い日までの期間)内に、これをしなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 第二項(第三項において準用する場合を含む。次号において同じ。)の規定により届け出た合併に関する計画のうち、第一項の規定に照らして重要な事項が当該計画において行われることとされている期限までに行われなかつた場合(当該期限から起算して一年以内に本文の審判開始決定をし、又は勧告する場合に限る。)
二 第二項の規定により届け出た合併に関する計画のうち、重要な事項につき虚偽の記載があつた場合
【共同新設分割又は吸収分割の規制】
第十五条の二 会社は、次の各号のいずれかに該当する場合には、共同新設分割(会社が他の会社と共同してする新設分割をいう。以下同じ。)をし、又は吸収分割をしてはならない。
一 当該共同新設分割又は当該吸収分割によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合
二 当該共同新設分割又は当該吸収分割が不公正な取引方法によるものである場合
○2 国内の会社は、共同新設分割をしようとする場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ当該共同新設分割に関する計画を公正取引委員会に届け出なければならない。
一 当該共同新設分割をしようとする会社のうち、いずれか一の会社(当該共同新設分割で設立する会社にその営業の全部を承継させようとするもの(以下この項において「全部承継会社」という。)に限る。)に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、他のいずれか一の会社(全部承継会社に限る。)に係る総資産合計額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき。
二 当該共同新設分割をしようとする会社のうち、いずれか一の会社(全部承継会社に限る。)に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、他のいずれか一の会社(当該共同新設分割で設立する会社にその営業の重要部分を承継させようとするもの(以下この項において「重要部分承継会社」という。)に限る。)の当該承継の対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき。
三 当該共同新設分割をしようとする会社のうち、いずれか一の会社(全部承継会社に限る。)に係る総資産合計額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、他のいずれか一の会社(重要部分承継会社に限る。)の当該承継の対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき(前号に該当するときを除く。)。
四 当該共同新設分割をしようとする会社のうち、いずれか一の会社(重要部分承継会社に限る。)の当該承継の対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、他のいずれか一の会社(重要部分承継会社に限る。)の当該承継の対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき。
○3 国内の会社は、吸収分割をしようとする場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ当該吸収分割に関する計画を公正取引委員会に届け出なければならない。
一 当該吸収分割をしようとする会社のうち、分割をしようとするいずれか一の会社(当該吸収分割でその営業の全部を承継させようとするもの(次号において「全部承継会社」という。)に限る。)に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、分割によつて営業を承継しようとする会社に係る総資産合計額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき。
二 当該吸収分割をしようとする会社のうち、分割をしようとするいずれか一の会社(全部承継会社に限る。)に係る総資産合計額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、分割によつて営業を承継しようとする会社に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき(前号に該当するときを除く。)。
三 当該吸収分割をしようとする会社のうち、分割をしようとするいずれか一の会社(当該吸収分割でその営業の重要部分を承継させようとするもの(次号において「重要部分承継会社」という。)に限る。)の当該分割の対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、分割によつて営業を承継しようとする会社に係る総資産合計額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき。
四 当該吸収分割をしようとする会社のうち、分割をしようとするいずれか一の会社(重要部分承継会社に限る。)の当該分割の対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、分割によつて営業を承継しようとする会社に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき(前号に該当するときを除く。)。
○4 前二項の規定は、次の各号のいずれかに該当する場合には、適用しない。
一 共同新設分割をしようとし、又は吸収分割をしようとする会社のうち、いずれか一の会社が他のすべての会社のそれぞれの総株主の議決権の過半数を有している場合
二 共同新設分割をしようとし、又は吸収分割をしようとする会社のそれぞれの総株主の議決権の過半数を有する会社が同一の会社である場合
○5 前三項の規定は、外国会社が共同新設分割をしようとし、又は吸収分割をしようとする場合に準用する。この場合において、第二項及び第三項中「総資産合計額」及び「最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高」とあるのは、「国内売上高」と読み替えるものとする。
○6 前条第四項及び第五項の規定は、第二項及び第三項(前項において準用する場合を含む。)の規定による届出に係る共同新設分割及び吸収分割の制限並びに公正取引委員会がする審判開始決定又は勧告に準用する。この場合において、同条第四項中「合併」とあるのは「共同新設分割又は吸収分割」と、同条第五項中「合併に」とあるのは「共同新設分割又は吸収分割に」と、「合併会社のうち少なくとも一の会社」とあるのは「共同新設分割をしようとし、又は吸収分割をしようとする会社のうち少なくとも一の会社」と読み替えるものとする。
【営業の譲受け等の規制】
第十六条 会社は、次に掲げる行為をすることにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該行為をしてはならず、及び不公正な取引方法により次に掲げる行為をしてはならない。
一 他の会社の営業の全部又は重要部分の譲受け
二 他の会社の営業上の固定資産の全部又は重要部分の譲受け
三 他の会社の営業の全部又は重要部分の賃借
四 他の会社の営業の全部又は重要部分についての経営の受任
五 他の会社と営業上の損益全部を共通にする契約の締結
○2 会社であつて、その会社に係る総資産合計額が百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるもの(第四項において「譲受会社」という。)は、次の各号の一に該当する場合には、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ営業又は営業上の固定資産(以下この条において「営業等」という。)の譲受けに関する計画を公正取引委員会に届け出なければならない。
一 総資産の額が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超える他の国内の会社の営業の全部の譲受けをしようとする場合
二 他の国内の会社の営業の重要部分又は営業上の固定資産の全部若しくは重要部分の譲受けをしようとする場合であつて、当該譲受けの対象部分に係る最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高が十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるとき。
○3 前項の規定は、次の各号の一に該当する場合には適用しない。
一 営業等の譲受けをしようとする会社及び当該営業等の譲渡をしようとする会社のうち、いずれか一の会社が他のすべての会社のそれぞれの総株主の議決権の過半数を有している場合
二 営業等の譲受けをしようとする会社及び当該営業等の譲渡をしようとする会社のそれぞれの総株主の議決権の過半数を有する会社が同一の会社である場合
○4 前二項の規定は、譲受会社が他の外国会社の営業等の譲受けをしようとする場合に準用する。この場合において、第二項第一号中「総資産の額」とあり、同項第二号中「最終の貸借対照表と共に作成した損益計算書による売上高」とあるのは、「国内売上高」と読み替えるものとする。
○5 第十五条第四項及び第五項の規定は、第二項(前項において準用する場合を含む。)の規定による届出に係る営業等の譲受けの制限及び公正取引委員会がする審判開始決定又は勧告について準用する。この場合において、同条第四項中「合併」とあるのは「営業又は営業上の固定資産の譲受け」と、同条第五項中「合併に」とあるのは「営業又は営業上の固定資産の譲受けに」と、「合併会社のうち少なくとも一の会社」とあるのは「営業又は営業上の固定資産の譲受けをしようとする会社」と読み替えるものとする。
【脱法行為の禁止】
第十七条 何らの名義を以てするかを問わず、第九条から前条までの規定による禁止又は制限を免れる行為をしてはならない。
【排除措置命令】
第十七条の二 第九条第五項若しくは第六項、第十条、第十一条第一項、第十五条第一項、第十五条の二第一項、第十六条第一項又は前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、報告書の提出若しくは届出を命じ、又は株式の全部若しくは一部の処分、営業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
○2 第九条第一項若しくは第二項、第十三条、第十四条又は前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該違反行為者に対し、報告書の提出若しくは届出を命じ、又は株式の全部若しくは一部の処分、会社の役員の辞任その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
【合併・分割の無効の訴え】
第十八条 公正取引委員会は、第十五条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)及び第四項の規定に違反して会社が合併した場合においては、合併の無効の訴えを提起することができる。
○2 前項の規定は、第十五条の二第二項及び第三項(これらの規定を同条第五項において準用する場合を含む。)並びに同条第六項において準用する第十五条第四項の規定に違反して会社が共同新設分割又は吸収分割をした場合に準用する。この場合において、前項中「合併の無効の訴え」とあるのは、「共同新設分割又は吸収分割の無効の訴え」と読み替えるものとする。
第四章の二 価格の同調的引上げ
【価格の同調的引上げに関する報告徴収】
第十八条の二 国内において供給された同種の商品(輸出されたものを除く。以下この条において同じ。)の価額(当該商品に直接課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)又は国内において供給された同種の役務の価額(当該役務の提供を受ける者に当該役務に関して課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)の政令で定める一年間における合計額が六百億円を超える場合における当該同種の商品又は役務に係る一定の事業分野につき、供給量(一の事業者が供給する当該同種の商品又は役務の数量をいい、数量によることが適当でない場合にあつては、その価額とする。以下この条において同じ。)が多いことにおいて上位を占める三の事業者の供給量を合計した量の国内において供給された当該同種の商品又は役務の供給量を合計した量(以下「総供給量」という。)に対する割合が十分の七を超える場合において、最も供給量が多い事業者を含む二以上の主要事業者(その供給量の総供給量に対する割合が二十分の一以上であつて、供給量が多いことにおいて上位を占める五の事業者をいう。以下この条において同じ。)が当該同種の商品又は役務の取引の基準として用いる価格について、三箇月以内に、同一又は近似の額又は率の引上げをしたときは、公正取引委員会は、これらの主要事業者に対し、当該価格の引上げの理由について報告を求めることができる。ただし、商品又は役務の価格が当該事業者の営む事業に係る主務大臣の認可、承認又は届出に係る場合(届出に係る場合にあつては、主務大臣が価格の変更を命ずることができる場合に限る。)における価格の引上げについては、この限りでない。
○2 経済事情が変化して国内における生産業者の出荷の状況及び卸売物価に著しい変動が生じたときは、これらの事情を考慮して、前項の金額につき政令で別段の定めをするものとする。
第五章 不公正な取引方法
【不公正な取引方法の禁止】
第十九条 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。
【排除措置命令】
第二十条 前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該行為の差止め、契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
○2 第七条第二項の規定は、前条の規定に違反する行為に準用する。
第六章 適用除外
【知的財産法による権利行使】
第二十一条 この法律の規定は、著作権法 、特許法 、実用新案法 、意匠法 又は商標法 による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。
【組合の行為】
第二十二条 この法律の規定は、次の各号に掲げる要件を備え、かつ、法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行為には、これを適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、この限りでない。
一 小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること。
二 任意に設立され、かつ、組合員が任意に加入し、又は脱退することができること。
三 各組合員が平等の議決権を有すること。
四 組合員に対して利益分配を行う場合には、その限度が法令又は定款に定められていること。
【再販売価格の拘束】
第二十三条 この法律の規定は、公正取引委員会の指定する商品であつて、その品質が一様であることを容易に識別することができるものを生産し、又は販売する事業者が、当該商品の販売の相手方たる事業者とその商品の再販売価格(その相手方たる事業者又はその相手方たる事業者の販売する当該商品を買い受けて販売する事業者がその商品を販売する価格をいう。以下同じ。)を決定し、これを維持するためにする正当な行為については、これを適用しない。ただし、当該行為が一般消費者の利益を不当に害することとなる場合及びその商品を販売する事業者がする行為にあつてはその商品を生産する事業者の意に反してする場合は、この限りでない。
○2 公正取引委員会は、次の各号に該当する場合でなければ、前項の規定による指定をしてはならない。
一 当該商品が一般消費者により日常使用されるものであること。
二 当該商品について自由な競争が行われていること。
○3 第一項の規定による指定は、告示によつてこれを行う。
○4 著作物を発行する事業者又はその発行する物を販売する事業者が、その物の販売の相手方たる事業者とその物の再販売価格を決定し、これを維持するためにする正当な行為についても、第一項と同様とする。
○5 第一項又は前項に規定する販売の相手方たる事業者には、次に掲げる法律の規定に基づいて設立された団体を含まないものとする。ただし、第八号及び第八号の二に掲げる法律の規定に基づいて設立された団体にあつては、事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会、商工組合又は商工組合連合会が当該事業協同組合、協同組合連合会、商工組合又は商工組合連合会を直接又は間接に構成する者の消費の用に供する第二項に規定する商品又は第四項に規定する物を買い受ける場合に限る。
一 国家公務員法
二 農業協同組合法
三 国家公務員共済組合法
三の二 地方公務員等共済組合法
四 消費生活協同組合法
五 水産業協同組合法
六 特定独立行政法人等の労働関係に関する法律
七 労働組合法
八 中小企業等協同組合法
八の二 中小企業団体の組織に関する法律
九 地方公務員法
十 森林組合法
十一 地方公営企業等の労働関係に関する法律
○6 第一項に規定する事業者は、同項に規定する再販売価格を決定し、これを維持するための契約をしたときは、公正取引委員会規則の定めるところにより、その契約の成立の日から三十日以内に、その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。ただし、公正取引委員会規則の定める場合は、この限りでない。
第七章 差止請求及び損害賠償
【差止請求】
第二十四条 第八条第一項第五号又は第十九条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、これにより著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
【損害賠償】
第二十五条 第三条、第六条又は第十九条の規定に違反する行為をした事業者(第六条の規定に違反する行為をした事業者にあつては、当該国際的協定又は国際的契約において、不当な取引制限をし、又は不公正な取引方法を自ら用いた事業者に限る。)及び第八条第一項の規定に違反する行為をした事業者団体は、被害者に対し、損害賠償の責めに任ずる。
○2 事業者及び事業者団体は、故意又は過失がなかつたことを証明して、前項に規定する責任を免れることができない。
【損害賠償請求権の前提及び消滅時効】
第二十六条 前条の規定による損害賠償の請求権は、第四十八条第四項、第五十三条の三若しくは第五十四条の規定による審決が確定した後(これらの規定による審決がされなかつた場合にあつては、第五十四条の二第一項の規定による審決(第八条第一項第一号又は第二号の規定に違反する行為をした事業者団体の構成事業者に対する審決を除く。)が確定した後)でなければ、裁判上これを主張することができない。
○2 前項の請求権は、同項の審決が確定した日から三年を経過したときは、時効に因つて消滅する。
第八章 公正取引委員会
第一節 設置、任務及び所掌事務並びに組織等
【設置及び任務】
第二十七条 内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第四十九条第三項 の規定に基づいて、第一条の目的を達成することを任務とする公正取引委員会を置く。
○2 公正取引委員会は、内閣総理大臣の所轄に属する。
【所掌事務】
第二十七条の二 公正取引委員会は、前条第一項の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
一 私的独占の規制に関すること。
二 不当な取引制限の規制に関すること。
三 不公正な取引方法の規制に関すること。
四 独占的状態に係る規制に関すること。
五 所掌事務に係る国際協力に関すること。
六 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき、公正取引委員会に属させられた事務
【職権行使の独立性】
第二十八条 公正取引委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。
【公正取引委員会の組織等】
第二十九条 公正取引委員会は、委員長及び委員四人を以て、これを組織する。
○2 委員長及び委員は、年齢が三十五年以上で、法律又は経済に関する学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が、両議院の同意を得て、これを任命する。
○3 委員長の任免は、天皇が、これを認証する。
○4 委員長及び委員は、これを官吏とする。
【委員長等の任期】
第三十条 委員長及び委員の任期は、五年とする。但し、補欠の委員長及び委員の任期は、前任者の残任期間とする。
○2 委員長及び委員は、再任されることができる。
○3 委員長及び委員は、年齢が七十年に達したときには、その地位を退く。
○4 委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のため両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前条第二項に規定する資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができる。この場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。
【委員長等の身分保障】
第三十一条 委員長及び委員は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
一 破産手続開始の決定を受けた場合
二 懲戒免官の処分を受けた場合
三 この法律の規定に違反して刑に処せられた場合
四 禁錮以上の刑に処せられた場合
五 公正取引委員会により、心身の故障のため職務を執ることができないと決定された場合
六 前条第四項の場合において、両議院の事後の承認を得られなかつたとき。
【委員長等の罷免】
第三十二条 前条第一号又は第三号から第六号までの場合においては、内閣総理大臣は、その委員長又は委員を罷免しなければならない。
【委員長】
第三十三条 委員長は、公正取引委員会の会務を総理し、公正取引委員会を代表する。
○2 公正取引委員会は、あらかじめ委員のうちから、委員長が故障のある場合に委員長を代理する者を定めておかなければならない。
【議決方法】
第三十四条 公正取引委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、議事を開き、議決することができない。
○2 公正取引委員会の議事は、出席者の過半数を以て、これを決する。可否同数のときは、委員長の決するところによる。
○3 公正取引委員会が第三十一条第五号の規定による決定をするには、前項の規定にかかわらず、本人を除く全員の一致がなければならない。
○4 委員長が故障のある場合の第一項の規定の適用については、前条第二項に規定する委員長を代理する者は、委員長とみなす。
【事務総局の組織】
第三十五条 公正取引委員会の事務を処理させるため、公正取引委員会に事務総局を置く。
○2 事務総局に事務総長を置く。
○3 事務総長は、事務総局の局務(第五十一条の二の規定により、公正取引委員会が審判官をして行わせることとした事務を除く。)を統理する。
○4 事務総局に官房及び局を置く。
○5 内閣府設置法第十七条第二項 から第八項 までの規定は、前項の官房及び局の設置、所掌事務の範囲及び内部組織について準用する。
○6 第四項の規定に基づき置かれる官房及び局の数は、三以内とする。
○7 審判手続(審決を除く。)の一部を行わせるため、事務総局に審判官五人以内を置く。
○8 審判官は、事務総局の職員のうち、審判手続を行うについて必要な法律及び経済に関する知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができると認められる者について、公正取引委員会が定める。
○9 事務総局の職員中には、検察官、任命の際現に弁護士たる者又は弁護士の資格を有する者を加えなければならない。
○10 前項の検察官たる職員の掌る職務は、この法律の規定に違反する事件に関するものに限る。
【事務総局の地方事務所】
第三十五条の二 公正取引委員会の事務総局の地方機関として、所要の地に地方事務所を置く。
○2 前項の地方事務所の名称、位置及び管轄区域は、政令で定める。
○3 第一項の地方事務所には、所要の地にその支所を置き、地方事務所の事務を分掌させることができる。
○4 前項の支所の名称、位置及び管轄区域は、内閣府令で定める。
【委員長等の報酬】
第三十六条 委員長及び委員の報酬は、別に定める。
○2 委員長及び委員の報酬は、在任中、その意に反してこれを減額することができない。
【政治活動又は営利活動等の禁止】
第三十七条 委員長、委員及び命令を以て定める公正取引委員会の職員は、在任中、左の各号の一に該当する行為をすることができない。
一 国会若しくは地方公共団体の議会の議員となり、又は積極的に政治運動をすること
二 内閣総理大臣の許可のある場合を除く外、報酬のある他の職務に従事すること
三 商業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと
【意見公表の禁止】
第三十八条 委員長、委員及び公正取引委員会の職員は、事件に関する事実の有無又は法令の適用について、意見を外部に発表してはならない。但し、この法律に規定する場合又はこの法律に関する研究の結果を発表する場合は、この限りでない。
【秘密漏示等の禁止】
第三十九条 委員長、委員及び公正取引委員会の職員並びに委員長、委員又は公正取引委員会の職員であつた者は、その職務に関して知得した事業者の秘密を他に漏し、又は窃用してはならない。
【一般的な調査】
第四十条 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、事業者若しくは事業者の団体又はこれらの職員に対し、出頭を命じ、又は必要な報告、情報若しくは資料の提出を求めることができる。
【調査の嘱託】
第四十一条 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、学校、事業者、事業者の団体又は学識経験ある者に対し、必要な調査を嘱託することができる。
【公聴会】
第四十二条 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公聴会を開いて一般の意見を求めることができる。
【必要な事項の公表】
第四十三条 公正取引委員会は、この法律の適正な運用を図るため、事業者の秘密を除いて、必要な事項を一般に公表することができる。
【国会に対する報告等】
第四十四条 公正取引委員会は、内閣総理大臣を経由して、国会に対し、毎年この法律の施行の状況を報告しなければならない。この場合においては、第十八条の二第一項の規定により求めた報告の概要を示すものとする。
○2 公正取引委員会は、内閣総理大臣を経由して国会に対し、この法律の目的を達成するために必要な事項に関し、意見を提出することができる。
第二節 手続
【事件調査の端緒】
第四十五条 何人も、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
○2 前項に規定する報告があつたときは、公正取引委員会は、事件について必要な調査をしなければならない。
○3 第一項の規定による報告が、公正取引委員会規則で定めるところにより、書面で具体的な事実を摘示してされた場合において、当該報告に係る事件について、適当な措置をとり、又は措置をとらないこととしたときは、公正取引委員会は、速やかに、その旨を当該報告をした者に通知しなければならない。
○4 公正取引委員会は、この法律の規定に違反する事実又は独占的状態に該当する事実があると思料するときは、職権をもつて適当な措置をとることができる。
【独占的状態規制に関する主務大臣の意見】
第四十五条の二 公正取引委員会は、独占的状態に該当する事実があると思料する場合において、前条第四項の措置をとることとしたときは、その旨を当該事業者の営む事業に係る主務大臣に通知しなければならない。
○2 前項の通知があつた場合には、当該主務大臣は、公正取引委員会に対し、独占的状態の有無及び第八条の四第一項ただし書に規定する競争を回復するに足りると認められる他の措置に関し意見を述べることができる。
【事件調査】
第四十六条 公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、次の各号に掲げる処分をすることができる。
一 事件関係人又は参考人に出頭を命じて審訊し、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること
二 鑑定人に出頭を命じて鑑定させること
三 帳簿書類その他の物件の所持者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出物件を留めて置くこと
四 事件関係人の営業所その他必要な場所に立ち入り、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査すること
○2 公正取引委員会が相当と認めるときは、命令をもつて定めるところにより、公正取引委員会の職員を審査官に指定し、前項の処分をさせることができる。
○3 前項の規定により職員に立入検査をさせる場合においては、これに身分を示す証明書を携帯させ、関係者に提示させなければならない。
○4 第一項の規定による処分の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
【調書】
第四十七条 公正取引委員会は、事件について必要な調査をしたときは、その要旨を調書に記載し、且つ、特に前条に規定する処分があつたときは、その結果を明かにして置かなければならない。
【勧告審決】
第四十八条 公正取引委員会は、第三条、第六条、第八条、第九条第一項、第二項、第五項若しくは第六項、第十条、第十一条第一項、第十三条、第十四条、第十五条第一項、第十五条の二第一項、第十六条第一項、第十七条又は第十九条の規定に違反する行為があると認める場合には、当該違反行為をしているもの(当該違反行為が第八条に係るものであるときは、当該事業者団体の役員及び管理人並びにその構成事業者を含む。)に対し、適当な措置をとるべきことを勧告することができる。
○2 公正取引委員会は、第三条、第六条、第八条第一項又は第十九条の規定に違反する行為が既になくなつていると認める場合において、特に必要があると認めるときは、当該違反行為を行つたもの(当該違反行為が第八条第一項に係るものであるときは、当該事業者団体の役員及び管理人並びにその構成事業者を含む。)に対し、適当な措置をとるべきことを勧告することができる。
○3 前二項の規定による勧告を受けたものは、遅滞なく公正取引委員会に対し、当該勧告を応諾するかしないかを通知しなければならない。
○4 第一項又は第二項の規定による勧告を受けたものが当該勧告を応諾したときは、公正取引委員会は、審判手続を経ないで当該勧告と同趣旨の審決をすることができる。
【課徴金納付命令】
第四十八条の二 公正取引委員会は、第七条の二第一項(第八条の三において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)に規定する事実があると認める場合には、事業者又は事業者団体の構成事業者(構成事業者が他の事業者の利益のためにする行為を行うものである場合には、その事業者。以下この条において同じ。)に対し、第七条の二第一項又は第二項に定める課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、当該違反行為について審判手続が開始された場合には、審判手続が終了した後でなければ命ずることができない。
○2 前項の規定による命令(以下「納付命令」という。)は、納付すべき課徴金の額及びその計算の基礎、課徴金に係る違反行為並びに納期限を記載した課徴金納付命令書の謄本を送達して行う。
○3 前項の課徴金の納期限は、課徴金納付命令書の謄本を発した日から二月後に定めなければならない。
○4 公正取引委員会は、納付命令をしようとするときは、当該事業者又は事業者団体の構成事業者に対し、あらかじめ、意見を述べ、及び証拠を提出する機会を与えなければならない。
○5 納付命令に不服があるものは、公正取引委員会規則で定めるところにより、課徴金納付命令書の謄本の送達があつた日から三十日以内に、公正取引委員会に対し、当該事件について、審判手続の開始を請求することができる。
○6 納付命令(第八条第一項第一号又は第二号の規定に違反する行為をした事業者団体の構成事業者に対する納付命令を除く。)は、前項に規定する期間を経過した後は、第二十六条の規定の適用については、当該違反行為について前条第四項、第五十三条の三又は第五十四条の規定による審決がされた場合を除き、確定した審決とみなす。
【審判手続の開始】
第四十九条 第四十八条第一項若しくは第二項に規定する場合又は独占的状態があると認める場合(第八条の四第一項ただし書に規定する場合を除く。第五十四条第一項において同じ。)において、事件を審判手続に付することが公共の利益に適合すると認めるときは、公正取引委員会は、当該事件について審判手続を開始することができる。
○2 前条第五項の規定による請求があつた場合においては、公正取引委員会は、当該請求を不適法として審決をもつて却下する場合を除き、遅滞なく、当該請求に係る事件について審判手続を開始しなければならない。
○3 前項の規定により審判手続が開始された場合においては、当該事件に係る納付命令は、その効力を失う。
○4 公正取引委員会は、第八条の四第一項に係る事件について審判手続を開始しようとするときは、当該事業者の営む事業に係る主務大臣に協議しなければならない。
【審判開始の方法】
第五十条 審判開始決定は、文書によつてこれを行い、審判開始決定書には、事件の要旨を記載し、かつ、委員長及び決定の議決に参加した委員がこれに署名押印しなければならない。
○2 審判手続は、第七条第一項若しくは第二項(第八条の二第二項及び第二十条第二項において準用する場合を含む。)、第八条の二第一項若しくは第三項、第八条の四第一項、第十七条の二若しくは第二十条第一項に規定する措置(第五十二条第一項において「排除等の措置」という。)を命じようとするもの又は第四十八条の二第五項の規定による請求をしたもの(以下「被審人」という。)に審判開始決定書の謄本を送達することにより、開始する。
○3 被審人には、審判の期日に出頭すべき旨を命じなければならない。
○4 審判の期日は、審判開始決定書の謄本を発した日から三十日後に、これを定めなければならない。ただし、被審人の同意を得たときは、この限りでない。
【答弁書】
第五十一条 被審人は、審判開始決定書の謄本の送達を受けたときは、これに対する答弁書を遅滞なく公正取引委員会に提出しなければならない。
【審判官への委任】
第五十一条の二 公正取引委員会は、審判開始決定をした後、審判官をして、公正取引委員会規則の定めるところにより、第四十六条第一項各号の処分の外、その後の審判手続(審決を除く。)の一部を行わせることができる。ただし、当該事件について審査官の職務を行つたことのある者その他当該事件の審査に関与したことのある者については、この限りでない。
【審査官の審判に関する権限】
第五十一条の三 第四十六条第二項の規定により指定された審査官は、審判に立ち会い、証拠の申出その他必要な行為をすることができる。
【被審人の防御権】
第五十二条 被審人又はその代理人は、審判に際して、公正取引委員会が当該事件について排除等の措置又は第七条の二第一項(第八条の三において準用する場合を含む。)の規定により課徴金の納付を命ずることが不当である理由を述べ、かつ、これを立証する資料を提出し、公正取引委員会に対し、必要な参考人を審訊し、鑑定人に鑑定を命じ、帳簿書類その他の物件の所持者に対し当該物件の提出を命じ、若しくは必要な場所に立ち入つて業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査することを求め、又は公正取引委員会が出頭を命じた参考人若しくは鑑定人を審訊することができる。
○2 被審人は、弁護士、弁護士法人又は公正取引委員会の承認を得た適当な者を代理人とすることができる。
【証拠不採用の理由開示】
第五十二条の二 公正取引委員会は、審査官又は被審人若しくはその代理人から申出のあつた証拠を採用しないときは、その理由を示さなければならない。
【被審人の不出頭】
第五十二条の三 公正取引委員会は、被審人又はその代理人が、正当な理由がなくて、審判の期日に出頭しないときにおいても、審判を行うことができる。
【審判の公開及び速記】
第五十三条 審判は、これを公開しなければならない。但し、事業者の事業上の秘密を保つため必要があると認めるとき又は公益上必要があると認めるときは、これを公開しないことができる。
○2 審判には、速記者を立ち会わせて、陳述を筆記させなければならない。
【参考人及び鑑定人の宣誓】
第五十三条の二 刑事訴訟法第百四十三条 から第百四十七条 まで、第百四十九条、第百五十四条から第百五十六条まで、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、公正取引委員会又は審判官が、審判に際して、参考人を審訊し、又は鑑定人に鑑定を命ずる手続について、これを準用する。
○2 前項の場合において、「裁判所」とあるのは「公正取引委員会又は審判官」と、「証人」とあるのは「参考人」と、「尋問」とあるのは「審訊」と、「被告人」とあるのは「被審人」とそれぞれ読み替えるものとする。
【委員会に対する直接陳述】
第五十三条の二の二 公正取引委員会は、第五十一条の二の規定により審判官に審判手続の一部を行わせた場合において、被審人又はその代理人の申出があるときは、これらの者が直接公正取引委員会に対し陳述する機会を与えなければならない。ただし、第四十九条第二項の規定により審判手続が開始された事件であつて、当該事件に係る違反行為について第四十八条第四項、次条又は第五十四条の規定による審決がされているものについては、この限りでない。
【同意審決】
第五十三条の三 公正取引委員会は、審判開始決定をした後、被審人が、審判開始決定書記載の事実及び法律の適用を認めて、公正取引委員会に対し、その後の審判手続を経ないで審決を受ける旨を文書をもつて申し出て、かつ、当該違反行為を排除し、若しくは当該違反行為が排除されたことを確保し、又は独占的状態に係る商品若しくは役務について競争を回復させるために自らとるべき具体的措置に関する計画書を提出した場合において、適当と認めたときは、その後の審判手続を経ないで当該計画書記載の具体的措置と同趣旨の審決をすることができる。
【排除措置に関する審判審決】
第五十四条 公正取引委員会は、審判手続を経た後、第三条、第六条、第八条、第九条第一項、第二項、第五項若しくは第六項、第十条、第十一条第一項、第十三条、第十四条、第十五条第一項、第十五条の二第一項、第十六条第一項、第十七条若しくは第十九条の規定に違反する行為があると認める場合又は独占的状態があると認める場合には、審決をもつて、被審人に対し、第七条第一項、第八条の二第一項若しくは第三項、第十七条の二若しくは第二十条第一項又は第八条の四第一項に規定する措置を命じなければならない。
○2 公正取引委員会は、審判手続を経た後、第三条、第六条、第八条第一項又は第十九条の規定に違反する行為が既になくなつていると認める場合において、特に必要があると認めるときは、審決をもつて、被審人に対し、第七条第二項(第八条の二第二項及び第二十条第二項において準用する場合を含む。)に規定する措置を命じなければならない。
○3 公正取引委員会は、審判手続を経た後、審判開始決定の時までに第一項に規定する行為又は独占的状態に該当する事実がなかつたと認める場合、審判開始決定の時までに同項に規定する行為又は独占的状態に該当する事実があり、かつ、既に当該行為若しくは独占的状態に該当する事実がなくなつていると認める場合(前項の規定により審決をする場合を除く。)又は独占的状態に該当する事実があつて第八条の四第一項ただし書に該当すると認める場合には、審決をもつて、その旨を明らかにしなければならない。
【課徴金納付に関する審判審決】
第五十四条の二 公正取引委員会は、審判手続を経た後、第七条の二第一項(第八条の三において準用する場合を含む。)に規定する事実があると認めるときは、審決をもつて、被審人に対し、当該違反行為に係る課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
○2 第四十八条の二第三項の規定は、前項の審決に準用する。
【審判審決における事実認定の方法】
第五十四条の三 前二条の審決においては、被審人が争わない事実及び公知の事実を除き、審判手続において取り調べた証拠によつて事実を認定しなければならない。
【審決の合議】
第五十五条 審決は、委員長及び委員の合議によらなければならない。
○2 第三十四条第一項、第二項及び第四項の規定は、前項の合議にこれを準用する。
○3 第八条の四第一項の措置を命ずる審決をするには、前項において準用する第三十四条第二項の規定にかかわらず、三人以上の意見が一致しなければならない。
【合議の非公開】
第五十六条 公正取引委員会の合議は、これを公開しない。
【審決書の方式】
第五十七条 審決は、文書によつてこれを行い、審決書には、公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用並びに第五十四条の二第一項の審決にあつては、課徴金の計算の基礎を示し、委員長及び合議に出席した委員がこれに署名押印しなければならない。
○2 審決書には、少数意見を附記することができる。
【審決の効力】
第五十八条 審決は、被審人に審決書の謄本を送達することによつて、その効力を生ずる。
○2 第八条の四第一項の措置を命ずる審決は、確定しなければ執行することができない。
【関係人の参加】
第五十九条 公正取引委員会は、必要があると認めるときは、職権で、審決の結果について関係のある第三者を当事者として審判手続に参加させることができる。但し、あらかじめ被審人及び当該第三者を審訊しなければならない。
【関係公務所又は公共的団体の参加】
第六十条 関係のある公務所又は公共的な団体は、公益上必要があると認めるときは、公正取引委員会の承認を得て、当事者として審判手続に参加することができる。
【関係公務所又は公共的団体の意見の陳述】
第六十一条 関係のある公務所又は公共的な団体は、公共の利益を保護するため、公正取引委員会に対して意見を述べることができる。
【審決の執行停止】
第六十二条 公正取引委員会が、第五十四条第一項又は第二項の規定により、審決をもつて違反行為の差止めその他の処分を命じた場合においては、被審人は、裁判所の定める保証金又は有価証券(社債等の振替に関する法律 (平成十三年法律第七十五号)第百二十九条第一項 に規定する振替社債等を含む。次条第一項及び第六十八条において同じ。)を供託して、当該審決が確定するまでその執行を免れることができる。
○2 前項の規定による裁判は、非訟事件手続法 により、これを行う。
【保証金等の没取】
第六十三条 被審人が、前条第一項の規定により供託をした場合において、当該審決が確定したときは、裁判所は、公正取引委員会の申立により、供託に係る保証金又は有価証券の全部又は一部を没取することができる。
○2 前条第二項の規定は、前項の規定による裁判に、これを準用する。
【審判審決後の調査】
第六十四条 公正取引委員会は、第五十四条第一項又は第二項の審決をした後においても、特に必要があるときは、第四十六条の規定により、処分をし、又はその職員をして処分をさせることができる。
【課徴金納付の延滞への対応】
第六十四条の二 公正取引委員会は、課徴金をその納期限までに納付しないものがあるときは、督促状により期限を指定してその納付を督促しなければならない。
○2 公正取引委員会は、前項の規定による督促をしたときは、同項の課徴金の額につき年十四・五パーセントの割合で、納期限の翌日からその納付の日までの日数により計算した延滞金を徴収することができる。ただし、延滞金の額が千円未満であるときは、この限りでない。
○3 前項の規定により計算した延滞金の額に百円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
○4 公正取引委員会は、第一項の規定による督促を受けたものがその指定する期限までにその納付すべき金額を納付しないときは、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。
○5 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとし、その時効については、国税の例による。
【認可申請の却下】
第六十五条 公正取引委員会は、第十一条第一項又は第二項の認可の申請があつた場合において、当該申請を理由がないと認めるときは、審決をもつて、これを却下しなければならない。
○2 第四十五条第二項の規定は、前項の認可の申請があつた場合に、これを準用する。
【認可又は審決の取消し又は変更】
第六十六条 公正取引委員会は、前条第一項に掲げる認可について、その認可の要件である事実が消滅し、又は変更したと認めるときは、審判手続を経て、審決をもつてこれを取り消し、又は変更することができる。
○2 公正取引委員会は、経済事情の変化その他の事由により、当該審決を維持することが不当であつて公共の利益に反すると認めるときは、審決をもつてこれを取り消し、又は変更することができる。ただし、被審人の利益を害することとなる場合は、この限りでない。
【緊急停止命令】
第六十七条 裁判所は、緊急の必要があると認めるときは、公正取引委員会の申立てにより、第三条、第六条、第八条第一項、第九条第一項若しくは第二項、第十条第一項、第十一条第一項、第十三条第一項若しくは第二項、第十四条、第十五条第一項、第十五条の二第一項、第十六条第一項、第十七条又は第十九条の規定に違反する疑いのある行為をしているものに対し、当該行為、議決権の行使若しくは会社の役員の業務の執行を一時停止すべきことを命じ、又はその命令を取り消し、若しくは変更することができる。
○2 第六十二条第二項の規定は、前項の規定による裁判に、これを準用する。
【緊急停止命令の執行停止】
第六十八条 前条第一項の規定による裁判については、裁判所の定める保証金又は有価証券を供託して、その執行を免かれることができる。
○2 第六十三条の規定は、前項の規定による供託に係る保証金又は有価証券の没取にこれを準用する。
【事件記録の閲覧謄写等】
第六十九条 利害関係人は、公正取引委員会に対し、審判開始決定後、事件記録の閲覧若しくは謄写又は課徴金納付命令書若しくは審決書の謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。
【送達すべき書類】
第六十九条の二 送達すべき書類は、この法律に規定するもののほか、公正取引委員会規則で定める。
【民事訴訟法の準用】
第六十九条の三 書類の送達については、民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)第九十九条 、第百一条、第百三条、第百五条、第百六条、第百八条及び第百九条の規定を準用する。この場合において、同法第九十九条第一項 中「執行官」とあるのは「公正取引委員会の職員」と、同法第百八条 中「裁判長」とあり、及び同法第百九条 中「裁判所」とあるのは「公正取引委員会」と読み替えるものとする。
【公示送達】
第六十九条の四 公正取引委員会は、次に掲げる場合には、公示送達をすることができる。
一 送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
二 外国においてすべき送達について、前条において準用する民事訴訟法第百八条 の規定によることができず、又はこれによつても送達をすることができないと認めるべき場合
三 前条において準用する民事訴訟法第百八条 の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
○2 公示送達は、送達すべき書類を送達を受けるべき者にいつでも交付すべき旨を公正取引委員会の掲示場に掲示することにより行う。
○3 公示送達は、前項の規定による掲示を始めた日から二週間を経過することによつて、その効力を生ずる。
○4 外国においてすべき送達についてした公示送達にあつては、前項の期間は、六週間とする。
【電子情報処理組織を使用した処分通知等】
第六十九条の五 行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律 (平成十四年法律第百五十一号)第二条第七号 に規定する処分通知等であつて、この法律又は公正取引委員会規則の規定により書類の送達により行うこととしているものについては、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律第四条第一項 の規定にかかわらず、当該処分通知等の相手方が送達を受ける旨の公正取引委員会規則で定める方式による表示をしないときは、電子情報処理組織(同項 に規定する電子情報処理組織をいう。以下この条において同じ。)を使用して行うことができない。
○2 公正取引委員会の職員が前項に規定する処分通知等に関する事務を電子情報処理組織を使用して行つたときは、第六十九条の三において準用する民事訴訟法第百九条 の規定による送達に関する事項を記載した書面の作成及び提出に代えて、当該事項を電子情報処理組織を使用して公正取引委員会の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。)に備えられたファイルに記録しなければならない。
【命令に委任する事項】
第七十条 この法律に定めるものを除く外、公正取引委員会の調査及び審判に関する手続その他事件の処理並びに第六十二条第一項及び第六十八条第一項の供託に関し必要な事項は、命令を以てこれを定める。
【行政手続法の適用除外】
第七十条の二 公正取引委員会がする第六十五条第一項に規定する認可の申請に係る処分その他この節の規定による審決その他の処分(第四十六条第二項の規定によつて審査官がする処分及び第五十一条の二の規定によつて審判官がする処分を含む。)については、行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第二章 及び第三章 の規定は、適用しない。
【不服申立ての制限】
第七十条の三 公正取引委員会がこの節の規定によつてした審決その他の処分(第四十六条第二項の規定によつて審査官がした処分及び第五十一条の二の規定によつて審判官がした処分を含む。)については、行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。
第三節 雑則
【特殊指定の制定手続】
第七十一条 公正取引委員会は、特定の事業分野における特定の取引方法を第二条第九項の規定により指定しようとするときは、当該特定の取引方法を用いる事業者と同種の事業を営む事業者の意見を聴き、かつ、公聴会を開いて一般の意見を求め、これらの意見を十分に考慮した上で、これをしなければならない。
【不公正な取引方法の指定の方式】
第七十二条 第二条第九項の規定による指定は、告示によつてこれを行う。
【独占的状態規制に関する公聴会】
第七十二条の二 公正取引委員会は、第八条の四第一項に係る事件について審判手続を開始しようとするときは、公聴会を開いて一般の意見を求めなければならない。
【告発及び不起訴処分の報告】
第七十三条 公正取引委員会は、その法律の規定に違反する犯罪があると思料するときは検事総長に告発しなければならない。
○2 前項の規定による告発に係る事件について公訴を提起しない処分をしたときは、検事総長は、遅滞なく、法務大臣を経由して、その旨及びその理由を、文書を以て内閣総理大臣に報告しなければならない。
【検事総長の通知による調査及び報告】
第七十四条 検事総長は、この法律の規定に違反する犯罪があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その旨を通知して、調査及びその結果の報告を求めることができる。
【参考人又は鑑定人の旅費及び手当】
第七十五条 第四十六条第一項第一号若しくは第二号若しくは第二項又は第五十一条の二の規定により出頭又は鑑定を命ぜられた参考人又は鑑定人は、命令の定めるところにより、旅費及び手当を請求することができる。
【公正取引委員会による規則の制定】
第七十六条 公正取引委員会は、その内部規律、事件の処理手続及び届出、認可又は承認の申請その他の事項に関する必要な手続について規則を定めることができる。
第九章 訴訟
【審決取消訴訟の出訴期間】
第七十七条 公正取引委員会の審決の取消しの訴えは、審決がその効力を生じた日から三十日(第八条の四第一項の措置を命ずる審決については、三箇月)以内に提起しなければならない。
○2 前項の期間は、不変期間とする。
【事件記録の送付】
第七十八条 訴の提起があつたときは、裁判所は、遅滞なく公正取引委員会に対し、当該事件の記録(事件関係人、参考人又は鑑定人の審訊調書及び速記録その他裁判上証拠となるべき一切のものを含む。)の送付を求めなければならない。
第七十九条 削除
【実質的証拠による拘束】
第八十条 第七十七条第一項に規定する訴訟については、公正取引委員会の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときには、裁判所を拘束する。
○2 前項に規定する実質的な証拠の有無は、裁判所がこれを判断するものとする。
【新しい証拠】
第八十一条 当事者は、裁判所に対し、当該事件に関係のある新しい証拠の申出をすることができる。ただし、公正取引委員会が認定した事実に関する証拠の申出は、次の各号の一に該当することを理由とするものであることを要する。
一 公正取引委員会が、正当な理由がなくて、当該証拠を採用しなかつた場合
二 公正取引委員会の審判に際して当該証拠を提出することができず、かつ、これを提出できなかつたことについて重大な過失がなかつた場合
○2 前項ただし書に規定する証拠の申出については、当事者において、同項各号の一に該当する事実を明らかにしなければならない。
○3 裁判所は、第一項ただし書に規定する証拠の申出に理由があり、当該証拠を取り調べる必要があると認めるときは、公正取引委員会に対し、当該事件を差し戻し、当該証拠を取り調べた上適当な措置をとるべきことを命じなければならない。
【審決の取消し】
第八十二条 裁判所は、公正取引委員会の審決が、左の各号の一に該当する場合には、これを取り消すことができる。
一 審決の基礎となつた事実を立証する実質的な証拠がない場合
二 審決が憲法その他の法令に違反する場合
【委員会への差戻し】
第八十三条 裁判所は、公正取引委員会の審決を取り消すべき場合において、さらに審判をさせる必要があると認めるときは、その理由を示して事件を公正取引委員会に差し戻すことができる。
【差止請求訴訟における担保提供命令】
第八十三条の二 第二十四条の規定による侵害の停止又は予防に関する訴えが提起されたときは、裁判所は、被告の申立てにより、決定で、相当の担保を立てるべきことを原告に命ずることができる。
○2 前項の申立てをするには、同項の訴えの提起が不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。)によるものであることを疎明しなければならない。
【差止請求訴訟の通知及び公正取引委員会の意見】
第八十三条の三 裁判所は、第二十四条の規定による侵害の停止又は予防に関する訴えが提起されたときは、その旨を公正取引委員会に通知するものとする。
○2 裁判所は、前項の訴えが提起されたときは、公正取引委員会に対し、当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項について、意見を求めることができる。
○3 公正取引委員会は、第一項の訴えが提起されたときは、裁判所の許可を得て、裁判所に対し、当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項について、意見を述べることができる。
【損害額に関する公正取引委員会の意見】
第八十四条 第二十五条の規定による損害賠償に関する訴が提起されたときは、裁判所は、遅滞なく、公正取引委員会に対し、同条に規定する違反行為に因つて生じた損害の額について、意見を求めなければならない。
○2 前項の規定は、第二十五条の規定による損害賠償の請求が、相殺のために裁判上主張された場合に、これを準用する。
【差止請求訴訟の管轄の特例】
第八十四条の二 第二十四条の規定による侵害の停止又は予防に関する訴えについて、民事訴訟法第四条 及び第五条 の規定により次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有する場合には、それぞれ当該各号に定める裁判所にも、その訴えを提起することができる。
一 東京高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(東京地方裁判所を除く。)、大阪地方裁判所、名古屋地方裁判所、広島地方裁判所、福岡地方裁判所、仙台地方裁判所、札幌地方裁判所又は高松地方裁判所 東京地方裁判所
二 大阪高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(大阪地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は大阪地方裁判所
三 名古屋高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(名古屋地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は名古屋地方裁判所
四 広島高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(広島地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は広島地方裁判所
五 福岡高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(福岡地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は福岡地方裁判所
六 仙台高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(仙台地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は仙台地方裁判所
七 札幌高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(札幌地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は札幌地方裁判所
八 高松高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(高松地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所又は高松地方裁判所
○2 一の訴えで第二十四条の規定による請求を含む数個の請求をする場合における民事訴訟法第七条 の規定の適用については、同条 中「前三条」とあるのは、「前三条及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第八十四条の二第一項」とする。
【東京高等裁判所の第一審裁判権】
第八十五条 左の各号の一に該当する訴訟については、第一審の裁判権は、東京高等裁判所に属する。
一 公正取引委員会の審決に係る訴訟
二 第二十五条の規定による損害賠償に係る訴訟
三 第八十九条から第九十一条までの罪に係る訴訟
【東京高等裁判所の専属管轄】
第八十六条 第六十二条第一項、第六十三条第一項(第六十八条第二項で準用する場合を含む。)、第六十七条第一項、第九十七条及び第九十八条に規定する事件は、東京高等裁判所の専属管轄とする。
【東京高等裁判所の特別合議体】
第八十七条 東京高等裁判所に、第八十五条に掲げる訴訟事件及び前条に掲げる事件のみを取り扱う裁判官の合議体を設ける。
○2 前項の合議体の裁判官の員数は、これを五人とする。
【差止請求訴訟の移送】
第八十七条の二 裁判所は、第二十四条の規定による侵害の停止又は予防に関する訴えが提起された場合において、他の裁判所に同一又は同種の行為に係る同条の規定による訴訟が係属しているときは、当事者の住所又は所在地、尋問を受けるべき証人の住所、争点又は証拠の共通性その他の事情を考慮して、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部について、当該他の裁判所又は当該訴えにつき第八十四条の二第一項の規定により管轄権を有する他の裁判所に移送することができる。
【法務大臣権限法の適用除外】
第八十八条 公正取引委員会の審決に係る訴訟については、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律 (昭和二十二年法律第百九十四号)第六条 の規定は、適用しない。
第九章の二 雑則
【政令又は規則による経過措置】
第八十八条の二 この法律に基づき、政令又は公正取引委員会規則を制定し、又は改廃する場合においては、その政令又は公正取引委員会規則で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
第十章 罰則
【私的独占又は不当な取引制限の罪等】
第八十九条 次の各号のいずれかに該当するものは、三年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
一 第三条の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をした者
二 第八条第一項第一号の規定に違反して一定の取引分野における競争を実質的に制限したもの
○2 前項の未遂罪は、罰する。
【確定審決違反の罪等】
第九十条 次の各号のいずれかに該当するものは、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第六条又は第八条第一項第二号の規定に違反して不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定又は国際的契約をしたもの
二 第八条第一項第三号又は第四号の規定に違反したもの
三 第四十八条第四項、第五十三条の三又は第五十四条第一項若しくは第二項の審決が確定した後においてこれに従わないもの
【企業結合規制違反の罪】
第九十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
一 第十条第一項前段の規定に違反して株式を取得し、又は所有した者
二 第十一条第一項の規定に違反して株式を取得し、若しくは所有し、又は同条第二項の規定に違反して株式を所有した者
三 第十三条第一項の規定に違反して役員の地位を兼ねた者
四 第十四条前段の規定に違反して株式を取得し、又は所有した者
五 前各号に掲げる規定による禁止又は制限につき第十七条の規定に違反した者
【届出等違反の罪】
第九十一条の二 次の各号のいずれかに該当するものは、二百万円以下の罰金に処する。
一 第八条第二項から第四項までの規定に違反して届出をせず、又は虚偽の記載をした届出書を提出したもの
二 第九条第五項の規定に違反して報告書を提出せず、又は虚偽の記載をした報告書を提出した者
三 第九条第六項の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の記載をした届出書を提出した者
四 第十条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反して報告書を提出せず、又は虚偽の記載をした報告書を提出した者
五 第十五条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の記載をした届出書を提出した者
六 第十五条第四項の規定に違反して合併による設立又は変更の登記をした者
七 第十五条の二第二項及び第三項(これらの規定を同条第五項において準用する場合を含む。)の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の記載をした届出書を提出した者
八 第十五条の二第六項において準用する第十五条第四項の規定に違反して共同新設分割による設立の登記又は吸収分割による変更の登記をした者
九 第十六条第二項(同条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の記載をした届出書を提出した者
十 第十六条第五項において準用する第十五条第四項の規定に違反して第十六条第一項第一号又は第二号に該当する行為をした者
十一 第十八条の二第一項の規定による処分に違反して報告をせず、又は虚偽の報告をした者
十二 第二十三条第六項の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の記載をした届出書を提出した者
【懲役と罰金の併科】
第九十二条 第八十九条から第九十一条までの罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
【虚偽の陳述又は鑑定の罪】
第九十二条の二 第五十三条の二の規定により宣誓した参考人又は鑑定人が虚偽の陳述又は鑑定をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
○2 前項の罪を犯した者が、審判手続終了前であつて、かつ、犯罪の発覚する前に自白したときは、その刑を減軽又は免除することができる。
【秘密漏示等の罪】
第九十三条 第三十九条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
【検査妨害等の罪】
第九十四条 第四十六条第一項第四号若しくは第二項又は第五十一条の二の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
【調査処分違反に対する罪】
第九十四条の二 次の各号のいずれかに該当するものは、二十万円以下の罰金に処する。
一 第四十条の規定による処分に違反して出頭せず、報告、情報若しくは資料を提出せず、又は虚偽の報告、情報若しくは資料を提出したもの
二 第四十六条第一項第一号若しくは第二項又は第五十一条の二の規定による事件関係人又は参考人に対する処分に違反して出頭せず、陳述をせず、虚偽の陳述をし、又は報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者
三 第四十六条第一項第二号若しくは第二項又は第五十一条の二の規定による鑑定人に対する処分に違反して出頭せず、鑑定をせず、又は虚偽の鑑定をした者
四 第四十六条第一項第三号若しくは第二項又は第五十一条の二の規定による物件の所持者に対する処分に違反して物件を提出しない者
五 第五十三条の二において準用する刑事訴訟法第百五十四条 又は第百六十六条 の規定による参考人又は鑑定人に対する命令に違反して宣誓をしない者
【両罰規定】
第九十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。
一 第八十九条 五億円以下の罰金刑
二 第九十条、第九十一条(第三号を除く。)、第九十一条の二又は第九十四条 各本条の罰金刑
○2 法人でない団体の代表者、管理人、代理人、使用人その他の従業者がその団体の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その団体に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。
一 第八十九条 五億円以下の罰金刑
二 第九十条、第九十一条第四号若しくは第五号(第四号に係る部分に限る。)又は第九十一条の二第一号若しくは第十一号 各本条の罰金刑
○3 前項の場合においては、代表者又は管理人が、その訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の訴訟行為に関する刑事訴訟法 の規定を準用する。
【法人の代表者に対する罰則】
第九十五条の二 第八十九条第一項第一号、第九十条第一号若しくは第三号又は第九十一条(第三号を除く。)の違反があつた場合においては、その違反の計画を知り、その防止に必要な措置を講ぜず、又はその違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた当該法人(第九十条第一号又は第三号の違反があつた場合における当該法人で事業者団体に該当するものを除く。)の代表者に対しても、各本条の罰金刑を科する。
【事業者団体の代表者等に対する罰則】
第九十五条の三 第八十九条第一項第二号又は第九十条の違反があつた場合においては、その違反の計画を知り、その防止に必要な措置を講ぜず、又はその違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた当該事業者団体の理事その他の役員若しくは管理人又はその構成事業者(構成事業者が他の事業者の利益のためにする行為を行うものである場合には、その事業者を含む。)に対しても、それぞれ各本条の罰金刑を科する。
○2 前項の規定は、同項に掲げる事業者団体の理事その他の役員若しくは管理人又はその構成事業者が法人その他の団体である場合においては、当該団体の理事その他の役員又は管理人に、これを適用する。
【事業者団体解散の宣告】
第九十五条の四 裁判所は、十分な理由があると認めるときは、第八十九条第一項第二号又は第九十条に規定する刑の言渡しと同時に、事業者団体の解散を宣告することができる。
○2 前項の規定により解散が宣告された場合には、他の法令の規定又は定款その他の定めにかかわらず、事業者団体は、その宣告により解散する。
【専属告発】
第九十六条 第八十九条から第九十一条までの罪は、公正取引委員会の告発を待つて、これを論ずる。
○2 前項の告発は、文書をもつてこれを行う。
○3 公正取引委員会は、第一項の告発をするに当たり、その告発に係る犯罪について、前条第一項又は第百条第一項第一号の宣告をすることを相当と認めるときは、その旨を前項の文書に記載することができる。
○4 第一項の告発は、公訴の提起があつた後は、これを取り消すことができない。
【審決違反に対する過料】
第九十七条 第四十八条第四項、第五十三条の三又は第五十四条第一項若しくは第二項の審決に違反したものは、五十万円以下の過料に処する。ただし、その行為につき刑を科するべきときは、この限りでない。
【緊急停止命令等違反に対する過料】
第九十八条 第六十七条第一項の規定による裁判に違反したものは、三十万円以下の過料に処する。
第九十九条 削除
【特許等の取消し及び政府との契約禁止宣告】
第百条 第八十九条又は第九十条の場合において、裁判所は、情状により、刑の言渡しと同時に、次に掲げる宣告をすることができる。ただし、第一号の宣告をするのは、その特許権又は特許発明の専用実施権若しくは通常実施権が、犯人に属している場合に限る。
一 違反行為に供せられた特許権の特許又は特許発明の専用実施権若しくは通常実施権は取り消されるべき旨
二 判決確定後六月以上三年以下の期間、政府との間に契約をすることができない旨
○2 前項第一号の宣告をした判決が確定したときは、裁判所は、判決の謄本を特許庁長官に送付しなければならない。
○3 前項の規定による判決の謄本の送付があつたときは、特許庁長官は、その特許権の特許又は特許発明の専用実施権若しくは通常実施権を取り消さなければならない。
〔附則・改正附則は略〕